深まるミステリー ニューカレドニアで生き物に出会うダイビング Vol.3

通常のダイビングで深海生物であるオオベソオウムガイに会え、日本では会えないさまざまな固有種にも会える。そんなあまり知られていないニューカレドニアの魅力を紹介してきた本企画。最終回は、「深場にいる魚が、浅場で見られる」 「気になるハイブリッド」「圧巻のブダイygショー」などなど、ニューカレドニアでのガイド歴9年の益田智史(アリゼ)さんが、この海で潜っているうちに気づいたニューカレドニアならではの不思議について石垣館長と語った。 写真 = 益田智史、戸村裕行(人物) 文 = 岡弥生

沼津港深海水族館 館長
石垣 幸二さん

深海生物に特化した世界的にも珍しい水族館の館長。並々ならぬ好奇心で深海生物の謎を追求し続けている。

アリゼ マネージャー
益田 智史さん

9年前にニューカレドニアに来て以来、その魅力にハマり、ダイビングガイドとして多くのゲストを案内し続けている。

あのニラミハナダイも比較的浅場で

不思議なことに、オーストラリアでは深場にいるとされている種が、ニューカレドニアでは比較的浅場で見ることができる。前回紹介したペインテッドアンティアスもその1つだが、じつは他にもあると益田智史さんは言う。

「ディープウォーターラスって、ディープウォーターって英名が付いているので、じつは深い場所で見られる種なのではないかと思って調べてみたのです。すると、オーストラリアではやはり深い所で見られる種とされていて驚きました。ニューカレドニアでは、水深20mで見られるのですから」

ディープウォーターラスが見られるのは、ブラックマンタでおなじみのポイント「パス・ドゥ・ブーラリ・アウト」の下げ潮の時。

「ジェフ(後述)に聞いたら、オーストラリアでは水深60~100mで見られると言っていましたよ。でも、なぜでしょうね。ベラ類はオウムガイのようにとくに垂直運動をするわけでもないのに不思議です。でも、そのポイントだけで、じゅうぶんにベラウォッチングが楽しめそうですね」

そんな石垣館長の言葉どおり、他にもこのポイントではラインドフェアリーラス、マゼンタストリークトラス、フェミニンラス、ドッテトラスなどの美しいベラ類の固有種が見られるとあって、マニアには垂涎のポイントとなっている。かなりマニアックともいえるベラ狙いの50分ダイブを実際に行ったという益田さんはこう続けた。

「ただ、1か所にとどまってじっくり向き合うハゼと違って、ゲストがみんなバラバラになってしまうので困りましたね (笑)。でもベラ好きにはたまらない場所だと思います」

この種は本企画第1回目に登場したジェフさんが所属する「ニューカレドニア・ラグーン水族館」にも展示されていると石垣館長。「深場で見られる種ばかりを集めた水槽があってニラミハナダ イ、ディープウォーターラス、マゼンタストリークトラスが1度に見られ、とてもぜいたくですよ」

深場といってもここでは水深20~30mのこと。日本では水深30mより深い場所で見られるニラミハナダイもニューカレドニアでは水深25~30m、通常のダイビングで見られるというから驚きだ。

ディープウォーターラス

Cirrhilabrus bathyphilus
(Randall & Nagareda, 2002)

オーストラリアのコーラルシーからニューカレドニアまでの西部太平洋で見られる固有種。オーストラリアでは水深60mより深い所に生息するといわれているが、ニューカレドニアでは水深20mで見られる。

ニラミハナダイ

Pseudanthias ventralis(Randall, 1979)

日本でも沖縄や小笠原諸島で見られるが、水深30m以深とされている。ニューカレドニアではヌメアからアクセスできるポイントとしては最北に位置する「フォース・パス・ドゥ・ウィトエ」で群れている。

ラインドフェアリーラス

Cirrhilabrus lineatus (Randall & Lubbock, 1982)

オーストラリアのGBRからニューカレドニアにかけて生息する固有種。各ポイントの水深8~30mで見られ、とくに「ソノア・ロック」では大きなハーレムが形成されている

マゼンタストリークトラス

Cirrhilabrus laboutei (Randall & Lubbock, 1982)

ニューカレドニア周辺海域に生息する固有種。奇抜な模様でダイバーを魅了する。水深15mほどで見られる。ヒレを全開にして泳ぐのはかなりまれで、見ることができたらラッキー

フェミニンラス

Anampses femininus (Randall, 1972)

ニューカレドニア周辺海域からイースター島にかけて生息する固有種。ブルーメタリックカラーの美しいメス(写真)が人気。オスはもう少し地味な配色。砂に潜る習性がある

ドッテトラス

Cirrhilabrus punctatus (Randall & Kuiter, 1989)

個体数が多く、色も地味目なので注目度は低いかもしれないが、この種も固有種だ。オーストラリアからトンガやフィジーまでと比較的広いエリアに生息している

コガネヤッコ×2?

知っている種と似ているけれど、どこか違う。あの種とこの種が混ざっている感じ、もしかしてハイブリッド(交雑種)?

そんな個体がまれに出現して話題になることがあるが、ニューカレドニアでも益田さんが気になっているものがある。

「『ソノア・ロック』で4年前から3~4個体確認できているのですが、コガネヤッコとナメラヤッコのハイブリットじゃないかと思われるものがあります。ただ、ナメラヤッコはニューカレドニアではまず見ないので、違う種との交雑種の可能性もあります」

益田さんが撮影した画像には奥にいわゆるコガネヤッコが、その手前にはハイブリッドかもしれない個体が写っている。「確かにハイブリットかもしれませんね。ただナメラヤッコがいないとすると、相手はアブラヤッコとかルリヤッコの可能性もあります。ジェフはニューカレドニアの北東630kmの洋上に浮かぶバヌアツ共和国にはこのタイプがたくさんいると言っています。ただ不思議なことにバヌアツには、逆にコガネヤッコが少ないそうです」

石垣館長の新たな情報により謎はさらに深まったが、ジェフさんによるとチョウチョウウオの仲間にもハイブリッドらしき個体が見られるという。「産卵場所が限られているから?」などさまざまな意見が出たが、謎解きにはまだ時間がかかりそうだ。

「ソノア・ロック」で見られるコガネヤッコ(奥)と別種のハイブリッド(手前)と思われるもの

「ブダイ稚魚の大群」とは

謎と言えば、年に1度見られる稚魚と思われるブダイ類の大群について言及した益田さん。

「数年前に初めて『パス・ドゥ・ブーラリ・アウト』で見たのですが、体長が10cmほどなので稚魚だと思うのですが、ハゲブダイやその他のブダイ類も加わったものが数万もの群れをなしていたのです。そこに肉食の大型魚が突っ込んで捕食しようとしていました。その中にはナポレオンの姿も。とにかくものすごい迫力で今でもあの感動は忘れられません」

それ以来、気をつけて見ていると、さまざまな種類のブダイの稚魚が、年に1度集まって大きな群れを作ることがわかってきた。時期は12~1月。その年によって群れの大きさは異なり、見られる場所も同じではないという。「繁殖時に群れて放精抱卵することはありますが、稚魚が何万匹もの群れを作るというのは聞いたことがないですね」

石垣館長も見たことがないというブダイ稚魚の群れだが、ニューカレドニアの海では毎年繰り広げられている不思議な生態行動の1つ。ただ、初めて見た時のような数万もの大きな群れには、その後出会っていないと益田さん。「あの時の感動をもう一度味わいたいと思っているのですが、今年はどうでしょうか」

ブダイ稚魚の大群が見られる12~1月は、ニューカレドニアのベストシーズン。ブラックマンタも安定して見られるし、前回紹介した固有種エレガントゴビーが見られる時期でもあり見どころ満載だが、「ニューカレドニアの不思議」にもぜひ注目して潜ってみてほしい。

数年前に益田さんが「パス・ドゥ・ブーラリ・アウト」で目撃したハゲブダイなどの稚魚の大群とその群れに襲いかかろうとしている捕食者たち

>> 第1回【深海生物】編 はこちら

>> 第2回【固有種】編 はこちら

AUTHOR

Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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