【岩崎隧道の閉塞状況】
岩崎隧道は潜水調査によって土嚢積みにより閉塞されていることが確認された
那須疏水は琵琶湖疏水、安積疏水と並び、三大疏水の1つに数えられている。明治18(1885)年から昭和3(1928)年にかけて整備された、第一次・第三次取水口(東水門)、第二次取水口、西水門導水路及び與水路は当時の状態を良好に残し、近代における大規模水利施設の取水システムの構造を知るうえで資料価値が高いことなどから平成18(2006)年に国の重要文化財に指定されている。
【隧道内の実測データ】
実測データと航空オルソ写真の重ね図(那須塩原市教育委員会2015より)。
屋内や地下では地上や洋上と異なり、GPS単独では座標の取得は不可能である
平成26年度に那須塩原市教育委員会事務局生涯学習課文化振興係が実施した調査は、これまで未調査であった西水門から延びる隧道の構造を明らかにすることを目的とした。調査の結果、西水門内の隧道は水門から約147mで岩崎隧道に接続しており、その構造も新たに判明した。
【西水門導水路】
「水路内は閉塞状況にある。水中環境にあるため、閉塞版に使用された木材及び縄がきわめて良好に保存されている
【隧道内の構造】
底板は石敷き、側壁は石材を4段垂直に積み上げ、上部は切り石を用い、第二隧道はアーチ形、岩崎隧道は合掌型の天井を作出し、目地材にはモルタルが使用されている
調査に際しては、地上レーザースキャナを用いて周辺地形、水門部分に加え、隧道内の三次元計測も実施したが、西水門から130mより奥は常時水で満たされているため、レーザースキャナが適用できない。また、隧道完成後は人が立ち入るのも困難なため現況確認も行われていなかった。そのため、ラジコンボート、水中ロボットを用いたモニタリングに加え、潜水士による目視調査を行い、隧道内部には水によって運ばれたシルトが床面に堆積していること、奥は閉塞板と土嚢によって閉塞されていることが明らかとなった。内部構造および閉塞位置を確定するため、潜水士による実測作業を行った。洞窟潜水と同様、隧道奥は常時天井まで水で満たされているためトラブルが生じた際に避難する手立てがなく、危険の伴う作業である。水の循環がほとんど無い環境であるため、一度舞い上がったシルトは半月後も水中を浮遊し続ける。視界が利かない中での実測及び撮影作業を余儀なくされたが、隧道内部の構造を明らかにするとともに、地上部分の航空写真データと合わせた解析を行うことで閉塞方法を把握するとともに、隧道内部の実測データを地図に落とし込むことができた。
【第二次取水口】
第二次取水口の水門は、通常は鉄製の門扉により塞がれているため、内部を見ることはできない
考古学3つの原則
「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」
考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、DIVER編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp
写真=山本 遊児(やまもと・ゆうじ)さん
水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員
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http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr
文・解説=酒井 中(さかい・あたる)さん
株式会社パスコ 環境文化事業部文化財センター 研究員/日本オセアニア学会会員/日本海域水中考古学会会員