世界の海を『科学探査船タラ号』で航海、科学者とアーティストによって地球温暖化やマイクロプラスチックの問題を可視化し、海を守ることの重要性を発信してきた「タラ オセアン」。
その日本支部「タラ オセアン ジャパン」が、全国の国立大学の臨海実験施設の連携組織JAMBIO(マリンバイオ共同推進機構)と協力し、日本発のローカル科学プロジェクトを立ち上げ活動中です。
沿岸域のマイクロプラスチックの実態は?
2020年にスタートした「Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査」では、北海道から沖縄まで、日本列島の沿岸海域のマイクロプラスチック汚染の定量化とプラスチック汚染源の特定や、プラスティスフィア(マイクロプラスチック粒子に付着する微生物叢)の研究。海洋生態系への影響を評価することを目指して活動を続けています。
日本沿岸海域は、海流などの関係からプラスチック汚染の「ホットスポット」で、世界平均のなんと27倍ものマイクロプラスチックが存在する海であると言われています。このまま対策が遅れると、2050年には、世界の海には魚よりもプラスチックの量の方が多くなってしまうという試算があることは、多くの方もご存知の通りです。
「海のプラスチック汚染を食い止めるためにも、早急に調査と研究を進め、同時に啓発、教育活動をおこなうことが重要」と、タラ オセアン ジャパン 事務局長のパトゥイエ由美子さん。
「Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査」では、これまでに、AMBIOに所属する6つの国立大学(岡山、広島、島根、九州、名古屋、筑波)と連携して、サンプリングを実施。各大学の臨海実験施設周辺、牛窓(岡山県)、竹原(広島県)、隠岐(島根県)、天草(熊本県)、菅島(三重県)、下田(静岡県)で、表層海水、海底の堆積物、砂浜で試料を採集。タラ オセアン ジャパンが海洋環境教育で連携協定を結んでいる香川県の粟島や、東北大学と北海道大学の協力を得て、女川(宮城県)、浅虫(青森県)、厚岸(北海道)でもサンプリングを行い、計220個のサンプルを採取してきました。
調査地点のすべてからマイクロプラスチックを検出
2020年と2021年の共同調査では、日本沿岸の海域で表層水と海底の堆積物を同時に採取。含まれるマイクロプラスチックの汚染状況を調べています。
中間的な結果ですが、すでに観察・処理済みの127個のサンプル(表層海水103、海底堆積物21、砂浜3)のすべてからさまざまな種類のマイクロプラスチック(ポリマー、ポリスチレン片、マイクロファイバー等)が検出され、マイクロプラスチック汚染の広がりが改めて確認されました。
「効果的な対策には、海洋プラスチックの量、分布の実態把握、発生源の特定、生物への影響評価などの科学的知見が不可欠ですが、沿岸海域の研究調査はまだまだ足りていません」(パトゥイエ由美子さん)。
海のマイクロプラスチックの実態解明には、膨大な手間と費用がかかりますが、現状が明らかになり、それが具体的な対策に生かされることを願うのは誰しもいっしょでしょう。
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調査研究は継続中ですが、コロナ禍による行動制限によってプロジェクトは大幅に遅延。その遅れを取り戻すため、「タラ オセアン ジャパン」は現在、クラウドファンディングに挑戦しています。
■クラウドファンディング
詳細はこちら
タイトル:「美しい海を未来へ| 海洋プラスチックの問題に、あなたからの追い風を!」
募集期間: 2022年3月25日(金)〜5月20日(金)23時まで
<資金使途>
1. 日本列島の沿岸海域のマイクロプラスチック汚染の定量化とプラスチック汚染源の特定。
2. プラスティスフィア(マイクロプラスチック粒子に付着する微生物叢)の研究。海洋生態系への影響を評価すること。
3. マイクロプラスチックの現状のみならず、地球温暖化など人間活動が海洋に与える影響について、科学や、アート、教育の力を使って、こどもや若い世代、多くの皆さんに知っていただける機会を提供し、啓発活動をおこなうこと。