フランスの科学探査スクーナー船タラ号が4月まで日本に寄港している。
母港であるフランスのロリアンを2016年5月28日に出港したタラ号は2017年2月18日に福岡へ。その後、尾道、神戸、名古屋をまわり、現在は横浜に寄港中。このあと、東京、下田、高知、沖縄とすすみ、各地で船の一般公開やセミナーなどのイベントを開催する。
タラ号とサンゴ
© F.Latreille Tara Expedition Fondation
© David Hannan – Fondation Tara Expeditions
フランスの非営利団体・タラ財団は、過酷な環境にも耐えられるように設計されたスクーナー船で神話的な象徴にもなっているタラ号を用いて、2003年より環境調査と保護のための活動を行ってきた。海洋への理解を深め保護するために、北極海の氷から南太平洋の冷水に至るまで、世界中を航海するのだ。アニエスベーなどがこのプロジェクトをサポートしている。
タラ号が航海に出るのはこれで11回目。予定されている航行距離は10万km。日本を含むアジア・太平洋でサンゴ調査を実施している。すでに3万kmを航行してきたが、その中でのサンゴ礁の観察とサンプル採取によって、地球温暖化によってサンゴがかなりのダメージをうけていることが明らかになっている。
寄港地ではイベントを開催
寄港地ではセミナーや上映会、展示などを開催。環境汚染や地球温暖などのいま地球で何が起きているのかを考えるきっかけとなっている。乗船体験イベントでは世界の海を航行するタラ号に実際に足を踏み入れることができ、生活する「家」でもあり、さまざまな調査やその研究を行う「ラボ」でもあるタラ号をクルーが案内してくれる。船の設備や、船での生活やこれまでの航海のこと、研究のことなど直接話をきくことが出来る。
事前予約が必要な乗船体験。たくさんのひとが列をつくって乗船を待つ。
今回案内してくれたニコラさん(右)。通訳さんを介して、船のことや生活のことなど、あれこれ教えてくれた。
船体は軽くて錆びないアルミでできている。北極や南極もまわるため、氷の海でも進めるように丸みを帯びているそう。
乗船しているのは6人の船員と7人の科学者。そしてアーティストとジャーナリスト。さまざまな国籍、さまざまな職能の人々が、決して大きいとは言えないスペースで長い時間を一緒に過ごす。生活のすべてが詰まったこの船は彼らにとっては第二の家であり故郷。船の名の由来も「風と共に去りぬ」の故郷「タラ」から。5ヶ月航海し5ヶ月家にいる生活だが、多様な人たちと過ごす時間が楽しいと語るニコラさんが印象的だった。
科学者たちのスペースである後部の甲板では、船のことだけではなく、タラ号の活動についても教えてくれる。海洋の表面積のわずか0.2%しかないサンゴ礁には、海洋生物の3分の1が生息。近年の地球温暖化で白化がすすむサンゴ礁がこのまま失われていくことの影響は計り知れない。わかりやすい説明に参加者たちは熱心に耳を傾け、次から次へと質問がとんだ。
サンゴについてのレクチャー
秘密基地のようなラボ
停泊している前のスペースでは展示が行われており、こちらは予約不要で誰でも見ることが出来る。乗船体験を終えた参加者のほか、犬の散歩などで通りかかる人々などもサンゴの生態やタラ号の活動について記されたフラッグに見入っていた。
タラ号 今後の寄港予定
横浜 : 2017年3月14日 – 3月20日
東京 : 3月20日 – 3月25日
下田 : 3月26日
高知 : 3月30日 – 4月1日
沖縄 : 4月16日 – 4月20日
>> 詳細はこちら
https://jp.oceans.taraexpeditions.org
2017年3月17日