緑のヒラワツナギソウ
石川県・能登島の海は、夏29℃、冬は5℃と寒暖の差があるため、海の四季をはっきりと感じることができます。その季節ごとの変化を如実に表してくれるのが海の植物である海藻や海草です。
そして、海と人が共に暮らす「里海」という理想郷が存在する能登島の海中には、海藻の森が広がっています。海藻で見る四季の移り変わり、変化する海中環境、それに合わせて繰り返される生態行動など、ひとつひとつの海藻にまつわるストーリーを、能登島の海藻に魅せられたガイド・須原水紀さんが美しい写真とともに紹介します。
能登島の水温も20℃を優に超え、すっかりウェットスーツで潜られるお客様も増えた。海藻ウォッチングの足取りも軽く、様々な色や形の海藻をお楽しみ頂いております。野山の植物のように四季の変化を楽しませてくれる海藻は、海を様々な色に変えていく。
さて、この時期に必ずと言っていいほど注目を集める海藻がある。特にダイビングを始めたばかりの方や、スノーケリングをお楽しみになる方から人気が高い。それもそのはず。彼女らにとって見慣れない海の中で、その海藻はひときわ目立っているのだから。それは「ヒラワツナギソウ」である。最盛期を終えたホンダワラが朽ちることで、むき出しになった水中の岩が、青く輝く海藻で覆われている。近寄ってみると、見る角度によって光る強さや色味が変わる。「光る海藻」と言っては喜び、「あの海藻の写真を撮りたい!」と言って、水中写真を始める方もとても多い。しかし張り切って撮ってみると、がっかりさせられる。なぜなら、まばゆく光る青い海藻を期待していたのに、撮れた写真は茶色い葉っぱ。光る海藻はどこに行ったのだろう。
発色されず
その謎は「ヒラワツナギソウ」の発色のしくみにあった。光って見えるのは、自ら発光しているわけではなく、構造色と言って、それ自体の微細な構造によって光の波長が干渉し合って発色する現象だそうな。身近なものだとCDの表面やシャボン玉がそうである。色素によるそのものの色ではないので、見る角度や光の当たり方で色が違って見えたり、時には色が無くなって見える。なるほど、写真を撮るときにフラッシュをバシッと当てることで、発色が妨げられたというわけだ。
ワレカラと
青のヒラワツナギソウとウミウシ
青や緑と微妙に色味が違うのも、色素ではなく光の波長の違いということ。とすればストロボの角度によって、海藻の色味や印象が変わるとなると、この「ヒラワツナギソウ」の前で頭を抱えることになりそうだ。それからまた、他にも構造色による発色を楽しめる海藻が見つけられそうだ。(写真はイギス目の仲間ではないかと思うが詳細は不明)
イギス目の仲間
まだまだ撮り尽くせない海藻の世界がありました。
須原 水紀(すはら・みずき)さん
生まれ故郷である能登のダイビングサービス<能登島ダイビングリゾート>でガイドとして勤務。海藻への愛と情熱はピカイチ。また、マクロ生物も大好きで、海藻に付くマクロ生物を探し出す眼は「顕微鏡の眼力」といわれるほど。