沖縄本島南浮原島沖 沈没した西欧船 水中考古学 Vol.11

陸の遺跡とは違いまだ手付かずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。第11回目は沖縄県うるま市の無人島、南浮原島。南浮原島の海底約17mには、1876年に座礁・沈没したと思われる異国船が眠っている。保存状態が良く、また銃の弾丸のような武器も発見されたため、とても稀な沈没船とされている。

【弾丸】
西洋式銃の弾丸と船を安定させるために船底に敷き詰められていたバラスト石。
弾丸の密集は当時の緊張状態を知ることができ、さらに、沈没船遺跡の保存状態がいいことを表している。

陸の遺跡とは違いまだ手付かずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。
そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。
第11回目は沖縄県うるま市の無人島、南浮原島。
南浮原島の海底約17mには、1876年に座礁・沈没したと思われる異国船が眠っている。保存状態が良く、また銃の弾丸のような武器も発見されたため、とても稀な沈没船とされている。

沖縄本島の東海岸に所在するうるま市は、琉球王国時代(15世紀前半〜1879年)のアジ(領主)である阿麻和利の居城であった勝連グスクが2000年に世界遺産として登録された地である。阿麻和利は海外貿易を盛んに行い、この地は日本の鎌倉にたとえられるほどの繁栄をしたことが「おもろ」に記されている。
その繁栄から時は流れ、琉球王国末期、うるま市の無人島である南浮原島のリーフに国籍不明の異国船(西欧船)が座礁・沈没した。『平敷屋字誌』(1998年、平敷屋区自治会刊)には1876(明治9)年、浮原島の東端のシシ(南浮原島の地元での呼び名)に異国船が座礁したことが記載されている。船には白人とシナ(中国)人が乗っていたようだ。シナ人の1人は、勝連間切(うるま市内)で死亡し、地元である平敷屋には「唐人墓」と呼ばれる墓がある。いまでも異国船の座礁・沈没に関する伝承があるようだ。
そして、琉球王国時代に「異国船」と呼ばれていた国籍不明の西欧船の残骸が、やはり南浮原島の海底約17mで発見されており、沈没船遺跡となって今も眠っている。

【銅の棒】
海底に露出している船体のパーツ。銅の棒が飛び出ているのがわかる。

これまでにこの海域に沈没船が存在することは、外国人ダイバーや地元のダイバーたちによって知られていた。そして近年、地元ダイバーの協力を得て、沖縄県立埋蔵文化財センターや南西諸島水中文化遺産研究会によって考古学的な海底調査が実施された。海底には船体をつなぎ留めるための銅の棒が刺さったままの木造船体の一部やしんちゅう製の船の部品、乗組員の持ち物・船の積み荷としてヨーロッパ陶器、ワイン瓶などのガラス製品、中国清朝磁器などが発見された。
また、磁器で作られた鳥の置物、日本の銭や西洋式銃の弾丸も密集して発見された。じつは沖縄県では、これまでに数か所で異国船と考えられる沈没船が発見されているが、銃の弾丸のような武器類が発見されるのは稀であった。また、一部であれ、木造の船体そのものが保存されているとわかった沈没船遺跡もこの遺跡だけである。今後の調査・研究の進展が待たれる。
余談だが、この地域は「色白の美人女性」が多い地域とうわさされていると聞く。その理由は……想像にお任せする。

【散乱する船体】
海底に散乱する船体のパーツ。海底に露出してしまった木造部分は消滅し、金属パーツのみが無残に残る。

考古学3つの原則

「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」 考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、月刊ダイバー編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp

写真=山本 遊児 (やまもと・ゆうじ)さん

水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員

>>this is the link with your pubblication…under your Picture:
http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr

文・解説=片桐 千亜紀 (かたぎり・ちあき)さん

沖縄県立博物館・美術館 主任学芸員/沖縄考古学会会員/日本人類学会会員/アジア水中考古学研究所理事/南西諸島水中文化遺産研究会副会長

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Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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