アカヤギに住み着いたオオガラスハゼ。串本ではよく見れる光景のひとつだ
フィッシュウォッチングの真骨頂を味わえる海
黒潮の影響を強く受ける串本沿岸海域では、真冬でも水温が15℃を下回ることがなく、年間を通じて透明度が良好。夏場の黒潮接近時はとくに透視度が上がり、25mを軽く超えることもある。海中が温暖なため、本州最大規模のテーブルサンゴが存在。夏から秋にかけては、その周囲を色とりどりの魚が泳ぎ回り、まるで南国かのような景観を見せるが、冬頃からは海藻が生えはじめ、サンゴの群生と海藻の森が共存するという珍しい海中シーンにお目にかかれる。
外海のポイント「二の根」で通年見られるキンギョハナダイ。数の多さは串本一
串本の海の大きな特徴は、生き物の種類の多さで、これまでに約1200種が観察されている。ダイビングポイントは大きく東側と西側に分かれるが、それぞれで観察できる生物相が大きく異なることが、生物種が多いことの理由の1つ。たとえば、「出雲」などの東側ポイントでは、チャガラやスナビクニンといった伊豆などでも観察される生き物が生息し、「備前」や「浅地」などの西側ポイントでは、アザハタやピグミーシーホースといった南方系の生き物が見られる。また、ジョーフィッシュやフリソデエビ、カエルアンコウなどの人気種が年間を通じて見られるほか、観察できる生き物たちが季節によってどんどん変わる。今の時期は砂地に身を隠すツバクロエイなどが見物だが、初夏から秋にかけては死滅回遊魚のアカヒメジの群れが大きくなり、アザハタの周囲に群れるキンメモドキやクロホシイシモチの数が一年でもっとも多くなる。海中景観が賑やかになると同時に、フィッシュウォッチングが輪をかけて面白くなる。
外海の「浅地」や、「沖の吉右衛門」の水深40m付近に生息するピグミーシーホース
セナキルリスズメダイが卵を守る様子は、初夏と初冬に見られる
イチ押しのポイント
串本の代表的な生き物のひとつ、アザハタが住みついていることでも知られる「備前」。クロホシイシモチやキンメモドキが群れ、美しい景観が広がっている。また、国内では珍しいイザヨイベンケイハゼも生息するうえ、砂地では各種ハゼを見つけることができる。ベテランはもちろん、ビギナーダイバーにもオススメのポイントだ。
国内では串本と屋久島でしかお目にかかれない非常に珍しいハゼ、イザヨイベンケイハゼ
ダイビングスタイル
◉ボートダイビングが主流
◉ビーチポイントが5か所、ボートポイントは約20か所ある
◉冬期(10月1日〜3月31日)に3本潜る場合、1本目のエントリー時間は8時。夏期(4月1日〜9月31日)の1本目のエントリー時間は9時になる。(2本潜る場合、1本目のエントリー時間が冬季は10時半、夏季は11時半になる。また、冬季の潜水可能時間は7時〜15時。夏季は7時〜18時)
◉ナイトダイビングはビーチでのみ可能
◉メインとなる西側のポイントは内海、外海に分かれる。流れが穏やかでマクロ生物も豊富な内海は、ビギナーやじっくり撮影に取り組みたいダイバーにオススメ。外海はキンギョハナダイ、メジナの群れにくわえ、ハンマーヘッドシャークやマダラトビエイ、ときにはマンタやイルカなどにも遭遇するダイナミックなポイントだ。また、深場にのみ生息するスジクロユリハゼやピグミーシーホース、オキノスジエビなどにもお目にかかれる。
串本へ潜りに行く
◉大阪方面から>>近畿自動車道、阪和自動車道、湯浅御坊道路を経て、終点のすさみ南ICへ。国道42号線を南下し、田辺、白浜を経て串本町に到着。大阪からの所要時間は2時間半〜3時間
◉名古屋方面から>>東名阪自動車道利用で関JCTへ。伊勢自動車道利用で勢和多気JCTを通過し、紀勢大内山ICで下車。国道42号線を南下し、熊野、新宮を経て那智勝浦道路を通過、串本町へ。名古屋からの所要時間は3時間半〜4時間
左上:ツバメクサハゼの喧嘩。ツバメクサハゼは縄張り意識が強い
右上:串本では生息数の多い、タスジウミシダウバウオ
左下:シマウミスズメのバトル。こんな珍しいシーンにも遭遇するから、フィッシュウォッチングはやめられない
右下: 〈マリンステージ串本店〉の二階から望む、みごとな夕日
シーズナリティ
◉1〜3月 水温16〜19度(ドライスーツもしくは6.5㎜ウェットスーツ+フード)
◉4〜6月 水温19〜24度(ドライスーツもしくは5〜6.5㎜ウェットスーツ+フード)
◉7〜9月 水温24〜29度(5㎜ウェットスーツ)
◉10〜12月 水温20〜26度(ドライスーツもしくは6.5㎜ウェットスーツ)
年間平均透明度は15mほど
ダイビングサービス
和歌山県東牟婁郡串本町串本1418-20
Tel.0735-62-4775
フィッシュウォッチングとフォトダイビングを中心に行う。ゲストのレベルや要望に合わせたガイディングをしてくれるため、マイペースにダイビングを楽しみたい人にはもちろん、生き物の生態に詳しくなりたい人や、被写体とじっくり向き合って写真撮影をしたい人にもオススメだ。4月に開業10周年を迎え、常勤スタッフが3名に。