予期せぬ単独潜水 危険なダイビング事例分析 Vol.7

DANアメリカでは、メンバーから寄せられたさまざまなトラブルの報告を専門家が分析・評価してダイビングの安全に役立てているが、DAN ジャパンでは、DANアメリカの協力により、その内容を翻訳、会員に紹介している。DANジャパンに、一般公開されている事例をピックアップして紹介してもらった。 今回紹介するのは、流れが強く、バディやグループと離ればなれになってしまったケースだ。

流れが強く、バディやグループと離ればなれになった。

報告されたケース
私がいつも組むバディは、そのダイビングには参加しませんでした。そして、一緒に潜ったことのない人とバディを組むことになったのですが、経験豊富なダイバーだったので私は何も心配していませんでした。ところが、潜降時に強い流れがあり、一緒に潜ったグループの人と離れ離れになってしまいました。バディと私は約50フィート(15m)程の距離で、お互いに見える位置でしたが、彼は私をおいてグループの他のメンバーとダイビングを続けました。私は潜降すれば全員に会えると考えたのですが、強い流れで着いたところはバディやグループと違う場所でした。

太平洋の真っただなか、水深96フィート(29m)に自分ひとり。周囲には誰もいない。私はパニック状態になり、すぐに水面に行かなければいけない、と思いました。幸いなことに自分の経験とトレーニングから何をすればよいかは判っていたので、急浮上はしませんでした。まずパニックモードから安全モードに切り替え、自分自身に「私ならこの状態から抜け出せるはずだ」と言い聞かせました。私は水深100フィート(30m)以深に潜った経験があり、ディープダイビングが好きですが、慣れない水域で突然ひとりになることは恐ろしかったです。速度をコントロールしてゆっくりとした浮上をし、忘れずに15フィート(4.5m)で安全停止をしてから水面に浮上し、ダイビングボートに手を振って拾ってもらいました。

担当のダイブマスターが大丈夫かどうかを確認しに来たのは、ボートに上がって器材を外した約30分後でした。そして、今からダイビングを続けたいか、と質問されたのですが、私の状態を確認しに来たのがずいぶん時間が経過してからだったこと、そして、この状態で再度潜るかと聞かれたことに本当に驚きました。私は、すでに水深96フィート(29m)まで潜り、水面休息をしなくてはならないので潜れない、と伝えました。

ボートに戻ってきたバディは、水中で私を見た時、私がトラブルに陥っていて浮上しようとしているように見えたから、自分はダイビングを続けることにした、と言ってきました。私は、私がトラブルに陥っていると感じたとしたら、水中で離れ離れになるべきではなかった。あなたが1人でダイビングを続け、トラブルに陥っても私は手助け出来ないから、と説明しました。私はこの出来事を、その日はビギナーダイバーと潜っていたダイブマスターの責任者に報告しました。彼は今後このダイブマスターやバディと私が一緒に潜らないようにすると言いました。

これだけではなく、その次の日、同じダイブマスター/バディと一緒に潜った、経験豊富なダイバーが同じ状況になりました。幸い何も問題はなかったのですが、大きな事故になる可能性がありました。私はこの出来事は教訓で、緊急事態で自分の経験とトレーニングが使えるということを学んだと考えています。
海では何が起こるか判らないので、ダイビング事故にさらに備えるために今では常にBCDにナイフをつけて潜っています。(訳注:日本では2009年7月4日以降、一部のダイビングナイフは規制されています。
詳しくは警視庁のお知らせ:http://www.scuba.or.jp/documents/diving_knife_3.18.pdfを参照するか、担当インストラクターに確認して下さい。)その後、私はこの出来事についてリゾートの主任ダイブマスターに報告したので、この問題に対処がなされ、今後は同様の状況が避けられることを期待したいと考えています。

専門家からのコメント

きちんと実施されれば、バディダイビングは安全性を向上させる重要な手段になります。
バディダイビングの手順はダイバーが水に入る前、水面で始まります。バディは一緒にダイビング計画を立て、水深・潜水時間・残圧の管理方法など、重要な項目を話し合ってください。また、バディのどちらか、もしくは2人共が写真や何かを収集するなど、何らかの水中活動を計画しているのであればそれを伝え、目的に応じたダイビング計画をたてなくてはなりません。もし同意できなければ、バディを解消して別に同じ目的を持つバディを見つけるのが良いでしょう。

バディとダイビング前チェックを実施し、互いの器材の配置と機能を確認して下さい。
ハンドシグナルを確認し、誤解が生じないようにするのも良いと思います。ダイビング中ずっとバディ同士が手に届くところにいるということも、良いダイビングの条件に含まれます。遠くからお互いが見える、というだけでは安全の確保はできず、バディはトラブルが起きたり緊急事態が生じたりしたら素早く手が届く必要があります。バディはお互いを頼ることが出来なくてはいけませんが、相手やダイブマスターを全面的にあてにしてダイビングを終えるようではいけません。自分の安全について、各ダイバーに最終的な責任があります。
安全に関するダイビングの習慣は、ダイバーが危険な状況に対して率直に意見を言うことで改善されます。トラブルや、トラブルが起きそうな状況を仲間のダイバーに注意喚起することでダイビングの安全性が向上し、それ以降のトラブルを防ぐことが出来ます。

– Brittany Trout

★インシデントレポートとは
大事にはいたらなかったが、ヒヤリとしたりハットした経験(インシデント)に関する報告書のこと。内容を分析し、類似した事例の再発や、事故の発生を防止することが主な目的。ヒヤリ・ハット報告書。

コラムニスト

DAN ジャパン(ダン・ジャパン)


〈一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会〉が行うレジャーダイビング事故者に対する緊急医療援助システム。会員になると、レジャーダイビング保険に自動的に加入。会報誌やwebサイトで潜水医学や安全に関する情報が得られる。また、海外で事故にあった場合にもスムーズに救助・搬送・治療が受けられる。

>> 公式サイトはこちら

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Koga

DIVER ONLINE 編集部

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