<ザトウクジラ:体長 11~14m 体重30t>
2015年の秋、八丈島でたくさんのザトウクジラが見られると話題になった。テレビのニュースで見た方も多いのではないだろうか。ザトウクジラは夏の間は高緯度の冷たい海で餌を食べて過ごし、冬には熱帯や亜熱帯の暖かい海で繁殖や子育てをする、回遊するクジラだ。日本では冬の間、小笠原や沖縄でその姿が見られ、ホエールウォッチング(クジラウォッチング)で人気を集めている。八丈島で数多くの、しかも岸の近くやあちらこちらで、ザトウクジラが見られたのは2015年が初めて。それまでは年に数回目撃例があるくらいだった。さてこの冬も、ザトウクジラは八丈島に姿を現すだろうか?期待を込めて、2016年11月からザトウクジラの調査が始まった!
八丈町は、東京海洋大学大学院の鯨類学研究室と共同で、2016年11月より調査を開始した。2017年4月までに12回の調査を行う予定で、現在までにすでに9回の調査を行い、延べ13名が調査に参加している。
うれしいことに、この冬もザトウクジラたちは八丈島に再び姿を見せてくれている。町の話では、東京海洋大学の調査チームによれば、現在までに、なんと数十頭の異なるザトウクジラが確認されているという。それも、1日海に出れば、1頭から2、3、頭の群れが10群以上も見られるというのだ。
3月の初め、私も調査に同行させてもらった。港を出て間もなく、あちらこちらでクジラのブロウ(呼吸のときに海面から高く上がる白い霧)が見える。水平線近くでは盛んにクジラがジャンプしている!それも、1頭ではなく、2頭がかわるがわるに跳んでいる!船を進めていくと、1頭でいるもの、2頭でいるものと、いくつもの群に出会う。水中マイクを入れると、「歌」と呼ばれる、ザトウクジラの雄の繁殖期の鳴き声も聞こえてくる。ここが八丈島?これまで、小笠原や沖縄でしか見られなかった、光景が目の前で繰り広げられている!遠くで2頭のクジラがジャンプを始め、いつまでも跳んでいる。それに呼ばれるように、右から左から3つの群れが姿を現す、というようなこともあった。
大きな呼吸音がして振り返ると、2頭のクジラの真っ黒な背中が船のすぐ後ろに見えた。クジラの呼吸音には、いつ聞いても感動する響きがある。この2頭のクジラは、船の下をくぐり、数メートルの距離で船の周りを2回まわって、ゆっくりと遠ざかって行った。
ザトウクジラたちは、冬の間波の穏やかな島の南側の海域で見られることが多いという。岸近くに来るため、陸からもクジラの姿を見ることができる。島の南側には温泉も多く、足湯「きらめき」や末吉道ヶ沢温泉の露天風呂「みはらしの湯」からは、温泉につかってクジラが見られると評判になっている。
島の人たちも、ザトウクジラがこれから毎年姿を見せれば、島の活性化の大きな力になると熱い期待を寄せている。今、八丈島には、小笠原や沖縄、黒潮町でホエールウォッチングが始まったころと、同じ熱気が溢れているように感じられた。
トラベルライター 友松こずえ
2017年3月23日