魚類図鑑で、サメが最初に出てくるわけ
ダイビングを始めたら「あれは何という魚だろう」と水中で出会う生物に興味を募らせ、多くの人が図鑑を手にすることと思います。そして大抵の図鑑の場合、サメが最初のほうで登場します。「人気が高いから」というだけでなく、そこには分類学上の理由があるんです。
魚類は今からおよそ5億5000万年前に地球上に現れた最初の脊椎動物ですが、顎の骨を持っている魚は、軟骨魚類と硬骨魚類の2つに大きく分けられます。そして、軟骨魚類はギンザメのグループと、サメ・エイのグループの2つに大きく分けられます。
ちなみに、硬骨魚類全体のうち約39%を占めているのはスズキ目で、ベラやハゼ、ギンポ、チョウチョウウオ、アジ、マグロなどなど、ダイビングで出会える魚の多くが含まれていて、世界中で1万種以上がいます。
魚類と一口に言っても、軟骨魚類と硬骨魚類という「綱」の違いから、サメやエイが図鑑の最初のほうで紹介されているというわけです。
※綱=リンネ式階級分類の「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」
いま世界中でサメの研究が加速中
軟骨魚類は、その名の通り骨格が軟骨のために化石に残りにくいという特有の事情があり、さらに深海に生息している種や、希少な種の場合、保護の対象になっているなど、研究の難しさがありました。ところが、DNA解析技術が進歩したことで、にわかに分子系統学の研究が盛んになってきています。
昨年10月にイギリスのオンライン科学雑誌『Nature Ecology and Evolution』には、日本の共同研究の論文「サメのゲノムを解読-サメの進化・生態の解明への新たな手がかり-」が掲載され、話題となりました。
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20181009_1/
系統樹マンダラとは?
「系統樹マンダラ」は、進化の系統樹の法則に従い動物を配置したもので、ひとつの共通祖先から、現在の地球上に生きる多様な生きものへの進化の繋がりを1枚のポスターで表現しています。見ているだけで楽しい、新しいサイエンティフィック・ビジュアルポスターです。
進化生物学者の長谷川政美さんの著書「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史」(ベレ出版)を元に、「系統樹マンダラ」はこれまでに、【真獣類編】【鳥類=恐竜編】【四足動物】【霊長類編】【カメ編】と5つのシリーズが制作されています。いずれも全体の編集から発行まで、畠山泰英さん(科学バー/キウイラボ代表)が手掛けています。
3年前の日本進化学会(於:東京工業大学)で畠山さんが、前述の共同研究でサメの分子配列解析ユニットリーダーを務めた工樂樹洋さん(理化学研究所 生命機能科学研究センター)にお会いした際、工樂さんから「系統樹マンダラシリーズにサメはないのですか?」と声をかけれたたのが発端だったそうです。
分子系統学の研究が加速したことも受け、今回シリーズ6作目として【サメ編】を制作することになりました。
現存するサメは約540種、エイは約680種類近くいるとされ、4.5憶年の進化の歴史を、美しい細密画約50点で表現しようとしています。アート作品としてのクオリティを保ちながら、中央に配置する系統樹は、現時点でもっとも信頼できる分岐年代に基づいて制作するため、上質なインフォグラフィックス作品とも呼べるものです。
クラウドファウンディングは7月26日まで!
これまでの「系統樹マンダラ」は、国立科学博物館や大阪市立自然史博物館のミュージアムショップなどで常時取り扱われ、研究者をはじめ学生やコアな層から高く評価されていました。ただ、もっと多くの人に知ってもらいたいとの理由で、5作目の【カメ編】で学術系クラウドファウンディングを行ったところ、344人ものサポーターにより目標金額118%を達成しました。
そして、今、6作目の【サメ編】のクラウドファウンディングが実行中です。サポートの種類は、1,000円/5,000円/10,000円/30,000円/50,000円/100,000円があり、それぞれにリターンの内容が異なります。目標金額は200万円。
フォルムのカッコよさなど“見た目”からダイバーの間でもファンが多いサメ。進化の歴史をひも解くプロジェクトをサポートできるチャンスが今あります。
作画は、古生物復元画家として活躍するとともに、大学で美術解剖学を教える画家の小田隆さん(大阪芸術大学准教授)が担当し、監修は先述の工樂さんと田中彰さん(日本板鰓類研究会会長)が行い、系統樹の総監修は長谷川政美さん(進化生物学者)、インフォグラフィックス(枝の長さが年代を表すように生活美しく仕上げる)は坂野徹さん(金沢美術工芸大学准教授)、全体のアートワークは日本を代表するエディトリアルデザイナーの木村裕治さんといった具合に、最高のプロフェッショナルたちがコラボしています。
“アート&サイエンス”でどこまで美しいものを生み出せるか……
クラウドファウンディングの受付は2019年7月26日19時00分までです。