閑静な住宅街の一角に
編集部が向かったのは新宿区愛住町。地図アプリに導かれるがまま車通りの多い道から一本入ると、飲食店やコンビニもない静かな道が広がります。そのまま進んでいくと「目的地に到着しました」と。見上げるとそこにはガラス張りのビル……。
SAKANABOOKSは1階にありました。入ってすぐのスペース、約4坪というコンパクトな本屋さんです。
店内には書籍・絵本・図鑑など本屋らしいラインナップに加え、調理不要で常温保存可能な食材付きの本や三陸産の缶詰といった”食”にフォーカスした商品、全国の水族館から集めたという”観る”にフォーカスしたパンフレットなどが並び、さまざまな切り口からサカナを知るアイテムが並びます。
「自分の推し(の生き物の本)がこの本屋になかったら寂しい気持ちになるなと思って、プランクトンからクジラまで幅広く集めました。また、東北を盛り上げることに参加したくて石巻の木の屋さんの缶詰も置いています」とスタッフの浦上宥海(うらかみ・うみ)さん。
目についたパンフレットラック。「パンフレットを送っていただけないか」と一軒ずつ、約120箇所に電話をかけて依頼したそう。
始まりはクラウドファンディング?!
全国初の”魚に特化した本屋”でサカナ好きを増やしたい-そんな想いから始まったSAKANABOOKSですが、始まりはクラウドファンディングだそうです。「5月19日〜6月12日でクラウドファンディングしました。無事達成できて嬉しかったです。ご支援いただいた皆様ありがとうございました」と浦上さん。
クラウドファンディングに込めた想いはこちら
釣り文化資料館ってどんなところ?
主な展示物は、和竿や魚籠(びく)といった昔の釣り道具や書籍。四方を海に囲まれ、多くの河川が流れる日本は世界に類のない「釣り文化」が継承されているものの、釣具専門の公立博物館は今も昔も存在しないそうです。(公益財団法人日本釣振興会が「釣り文化資料室」という施設を運営しています)
文化として貴重な釣り具を保存していくため、1988年に資料館が開設されました。
スタッフオススメの書籍ベスト3
「下の名前が宥海(うみ)って言うんですけど、父が釣り好きで昔から海が好きでした。毎年、地元・名古屋に帰ったら父と一緒に鳥羽あたりでトローリング。カジキを釣ってます」とかっこいい釣り女子の面がある一方で、いちばん好きな生き物は”カエルアンコウ”というキュートさも。
そんな浦上さんに、この夏オススメな書籍を伺いました。
江戸博物文庫 魚の巻-水界の王族たち
遊泳する色と形の美しさ。海水魚を中心に江戸期の彩色魚類図版約180種が収録されており、和名の由来、味や調理法など食材としての魅力も説明されています。
「江戸の博物図版からとってきている魚の絵なんですけど、江戸らしい独特な表情がおもしろいです。現代の絵ではないようなビビットでどこか誇張しているような色使い、浮世絵チックな表情が見られます」
子どもと一緒に覚えたい 貝殻の名前
海水浴場で子どもが拾ってきた貝殻が分かる身近な貝殻の名前、特徴などを紹介するアート図鑑。一般的な貝殻の図鑑と異なり、マニア向けの数の多さではなく、1つ1つをディープに解説。一目で分かる1円玉との比較による実物大の写真も見どころ。一般的な図鑑に載っているようなキレイな貝殻だけでなく、実際に拾った劣化した状態や、割れた状態なども掲載。拾った貝殻で何をするか、など独自の切り口で他にないアイデアが満載。自然科学に目覚める1冊です。夏に持っていると楽しさが倍増します。
「貝を拾うことに特化して作られている本で、ほんのちょっと海を歩けば見つかる、身近な貝が載っています。標本の作り方だったり、パッと見で間違えやすい貝も載っていて読んでいて楽しい本です。本としてはもちろん、飾ってても可愛いです。」
日本の美しい水族館/9月3日発売
幻想的な水族館の写真がSNSでも人気の銀鏡つかさ氏が、全国44の水族館を撮り下ろし写真で紹介!圧倒的な美しさと臨場感あふれる写真で、水族館の“雰囲気”を存分に伝えながら、各種水槽、建物自体や順路などのつくり、コンセプトの面白さを解説。また、それぞれの水族館でしか見られない珍しい生きものや、トビウオやサンマなど身近だけれど実はレアな展示、空飛ぶペンギンやイルカと遊べる浮島、水面から眺めるジンベエザメなど面白い展示方法も紹介。
「銀鏡つかささんが撮る水族館の写真はとってもかっこいい。静かに語りかける滋味深い写真といいますか…水生生物の姿を自然に魅せるんです。そして、銀鏡さんの写真を見たら必ずと言っていいほど水族館に行きたくなります。行ったことのある水族館でも、こんな展示の仕方をしていたのかと新たな発見があったり。銀鏡さんは水槽の中の生き物と会話できるのかなと思うほど、ピッタリ目が合った奇跡の瞬間をそっと捉えてる。だから魅力的なんです」
【番外編】ウオヒレウロ子の素敵なウオヒレの世界
著者は、銀座のお寿司屋さん「すし処志喜」の女将。100種類を超える様々な魚の下処理にかかわりながら、ネタになる身や出汁に使われる骨を除いて手元に残った大小様々な形や色のヒレを眺めるうちに、捨ててしまうのがもったいなくて厨房の片隅で干して保存しはじめたのが、コレクションのはじまりだそう。女将の止まらない「ウオヒレ愛」が一冊の作品集になりました。
「どうしても捨てなきゃいけなかった魚のヒレを乾燥させて、レジンの樹脂でコーティングしたのを集めたZINE(ジン:少部数で発行する自主制作の出版物)。色付けをしていないのにこんなにカラフルで美しいんだなぁ、とびっくりしました。同じ種類の生き物でも季節等によって個体差があって、同じウマヅラハギでもヒレの色が全然違ったり…奥が深い。おもしろいです!著者のウオヒレウロ子さんは、話してると溢れんばかりのウオヒレ愛が伝わってきます」
SAKANA BOOKS(サカナブックス)
営業時間
12:00~17:30
定休日
木・金曜日※そのほか臨時休業あり、最新情報はTwitter(@SAKANABOOKS_)をチェック
所在地
〒160-0005 東京都新宿区愛住町18-7(株式会社週刊つりニュース1階)
アクセス
都営新宿線「曙橋駅」A1出口より徒歩5分
または、丸ノ内線「四谷三丁目駅」2番出口より徒歩6分
取材協力=SAKANABOOKS 写真と文=須賀円香