やや波の荒い場所を好み、海底付近を活発に泳ぎまわっている。エントリー、エキジットポイント周辺で見つかるかもしれない。カエルウオ/大きさ10㎝。
今回本誌で紹介したトウシマコケギンポに限らず、
海の生き物はさまざまな場所を住み家にしている。
海中でこれと思うひとつの岩を限定して、
その岩肌を丹念に調べてみると思わぬ所にくらす小さな生き物が見つかるかもしれない。
その場所を覚えておいて、次に潜るときも訪ねてみると、同じ生き物がちゃんとそこにいる。
そんな楽しみ方もある。
私のお楽しみは伊豆半島のとある場所にある、カエルウオ団地だ。
水深1mほどの岩肌にいくつも小さな穴があいていて、たくさんのカエルウオが入居している。
カエルウオは縄張り意識が低いようで、
近づくとさっさと自分の部屋を明け渡してひらひらと泳いでいってしまう。
それでも、少し離れた場所で観察していると、大抵、同じ穴に戻ってくる。
住み家に対して執着心はないけれど、好みはそれなりにあるようだ。
卵を守っているカエルウオはその場所を離れないけれど、
トウシマコケギンポのように威嚇してくることはない。
「あ、いやだな。困ったな」という顔で上目づかいに見つめられると、
こちらも「どうも、おじゃましました」と退散するしかない。
撮影/小林安雅
文/こばやしまさこ
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伊豆半島の海にどっぷりつかって25年の小林安雅さんが、ファインダーを通して見つめてきた生き物たちのさまざまな生態を紹介しています。