実る秋 能登島の海藻にまつわる物語 Vol.15

秋の実り

先日、お世話になっている民宿からの招待で、秋祭りに参加してきた。島の収穫祭である。と言っても、獅子舞や神輿の担ぎ手としてではなく、ご馳走のおよばれを頂いてきた。田舎ではお祭りの時に親族、友達、取引先など、大勢を家に招いて料理を振る舞う習慣がる。能登島では9月に入るとすぐに稲刈りが忙しく行われる。都会に出た子供や孫も戻り、家族が田んぼに集まる。狭い集落の道路に農機が行き交う。ちょっとした賑わいがあって活気づく。あっという間に収穫が終わると、秋祭りが始まり、敬老の日から約1か月、毎週、島のどこかで祭りがおこなわれている。今年の夏は天気に恵まれたおかげで、米の出来も良いそうだ。我が家は7俵も買い入れた。
海岸近くにある田んぼの風景は能登島ならでは。海の潮風により、おいしいお米ができると聞いた。里山と里海が交わる風景。私たちはその側を歩いて潜りに行くのだ。

ホソエガサの胞子

さて、実りはお米だけではなく、海の海藻や海草にもあるのはご存じでしょうか。能登島の象徴的存在になるまで知られるようになった、人気の海藻「ホソエガサ」はすっかり胞子を落として、シーズンを終わらせた。グラスの緑はビーズのような胞子となって、次々とこぼれ落ち、今となっては柄だけが落ちている状況。

イギスの胞子婁

また、イギスの仲間であろう海藻も、胞子嚢が破れてしまい、胞子が全て放出されたようである。

コアマモの花粉婁

コアマモの果実

ノトウミヒルモの花粉

ノトウミヒルモの果実

一方、海草については、今年初めて開花を突き止めた「コアマモ」は9月が最盛期なのでしょうか。花粉嚢から漂う煙のような花粉、そして花びら。ついには熟した果実が鞘の中で種子になるのを待っている。また、「ノトウミヒルモ」の開花は一旦終息したものの、9月に入ると、またもや復活。地に視線を落とすと蕾が並び、次々と開花を始めているのに驚かされる。小さな蕾が少し膨らむと、蕾を中から割るようにして花粉溢れ、トロトロした液が流れ出てくる。これもまた受粉した花が果実をつくり、中で種子を作っているのだ。ひとつ拝借して指でつぶしてみると、小さな粒が数個出てきた。それはまだ青くてぬるっとした感触があり、まだ種子としては成熟していないもののようだった。

夏の草原

この夏は海の植物にも環境が良かったのか、ホソエガサ、コアマモ、ノトウミヒルモは生息範囲を大きく広げていた。ビーチの砂地はほとんど緑に覆い尽くされ、大草原である。これから水温が下がると、次はホンダワラの本格的なシーズン。今年はなのりその森もきちんと撮っていきたいと思う。

須原 水紀(すはら・みずき)さん
生まれ故郷である能登のダイビングサービス<能登島ダイビングリゾート>でガイドとして勤務。海藻への愛と情熱はピカイチ。また、マクロ生物も大好きで、海藻に付くマクロ生物を探し出す眼は「顕微鏡の眼力」といわれるほど。

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AUTHOR

Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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