ウミホタルと星 能登島の海藻にまつわる物語 Vol.16

星の軌道とウミホタル

気が付くと、もう秋も過ぎ去ろうとしていて、私は誰もいない夜の海辺に向かった。今夜はシーズンもそろそろ終わるウミホタルを見に来た。ウミホタルは夏から秋にかけて見ることができるのだが、私はこの時期に見るのが気に入っている。とても弱く光っては消える青い小さな光は、少しでも灯りが邪魔をすると見失ってしまう。甲殻類のひとつである小さなウミホタルは、海の中で以心伝心のために光を放つという説もあるそうだ。
私はそれを邪魔しないように、できるだけ小さな灯りで3脚を据えたりして準備にとりかかる。予め場所などは決めておいてあるから、まぁまぁ整ったところでシャッターをきりはじめた。波が岸辺を走る音に交じって、シャッターの音が響く。その音がひどく鋭くて耳障りに聞こえるくらい、波の音は静かで優しい。この波打ち際に腰を下ろすと、海の向こうの方に漁船が漁火を灯しているのが見える。あの船の上では漁師が網を曳いて汗を流しているのかもしれない。
ウミホタルが各地で減ってきていることを聞かされると、こののどかな能登島には到底よそのことのように思えてしまう。星が瞬いた夜が明ければ、海の向こうから朝日が光を射してくる。犬を連れて歩いていると、同じく朝にやって来るおじいさんがいる。海を眺めながら新聞を広げて、大体読み終わったところでベンチに横になり波を見ている。きっと昔は毎朝早くに漁に出ていたのかもしれない。
先日、地元の方々と話をする機会があった。ずっとここに暮らす人も、若くに都会に出た人も、みな、この海辺の町で生まれ育った方々だった。この松島の海も昔に比べるとずいぶんと変わってしまったそうな。埋め立てられているこの海岸は、子供たちが手づかみで魚やエビを獲っていた遠浅の海だったそう。豊かな海藻が魚の隠れ場所になり、いろんな生きものが集まってくるので、地元の自慢の海だったそう。
全国的なウミホタルの激減は、他人ごとではないようだ。時代の流れの中でやむを得ない変化を危ぶんだり、見守りながら活かしたいと考える人がいる。

須原 水紀(すはら・みずき)さん
生まれ故郷である能登のダイビングサービス<能登島ダイビングリゾート>でガイドとして勤務。海藻への愛と情熱はピカイチ。また、マクロ生物も大好きで、海藻に付くマクロ生物を探し出す眼は「顕微鏡の眼力」といわれるほど。

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Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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