大貿易時代の落とし物 オーハ島 海底遺跡の陶磁器 水中考古学 Vol.2

陸の遺跡とは違いまだまだ手付かずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。第2回目となる今回は、久米島の東、オーハ島(東奥武島)の海中に広がる、大量の陶器の破片。この海でいったい何があったのか、その背景を考えてみる。

【陶磁器】

海底に顔を出す陶磁器が、ここで起きた海難事故の証人である

沖縄本島の西約100㎞に位置する久米島は、古来より沖縄と中国を結ぶ洋上にあって、交易船の風待ちや物資補給の寄港地として重要な役割を果たした。
オーハ島は、その久米島の東側に位置し、干潮時には歩いて渡ることもできる周囲約2.7㎞の小さな島で、今は無人島となっている。この島の東の先には、はての浜と呼ばれる長大な砂州が発達しており、マリンスポーツを楽しむ観光スポットとして知る人は多い。
ある日、オーハ島沖の海底から焼き物の破片が拾われた。その焼き物は「青磁」と呼ばれるもので、14世紀後半から15世紀前半頃、中国で焼かれたものであることがわかった。じつはこの海域は他にも焼き物が拾われるポイントがあり、中には12世紀頃の焼き物も拾われている。

【オーハ島】
中央の小島がオーハ島、その向こうには長さ約7㎞のはての浜の砂州が延びる

青磁が使われた頃の沖縄は、各地に按司と呼ばれる領主が登場し群雄割拠した時代である。有力な按司はグスクと呼ばれるとりでを築き、船を出して遠く中国や東南アジアと交易を行ったことが知られている。久米島のほぼ中央の山頂部には宇江城と呼ばれる城があり、そこから2・13mもの巨大な碇石(アンカーストック)が発見された。今は久米島博物館でこれを見学することができる。
オーハ島沖の海底には今もおびただしい量の焼き物が散乱し、およそこれまで目にしたことがある海底の風景とは思えない異様な光景が広がっている。
この焼き物がなぜ海底に散乱するのか。想像するに、洋上を航行中の、陶磁器を満載した船がなんらかの事故で積荷を積んだまま沈んだのではないかと考えられる。あるいは、座礁した船が船体を軽くするために積荷を投棄したのかもしれない。

【発見】
スノーケリングで海底に散乱する陶磁器を発見! 初めての人でも参加可能

近年この海域では、スノーケリングやガラスボートを利用して海底の遺跡を見学する水中文化遺産見学会が、沖縄で初めて開催された。海底にひっそりと沈む数百年前の焼き物は、かつてこの島に訪れた大貿易時代の栄華を教えてくれる。

考古学3つの原則

「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」 考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、月刊ダイバー編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp

写真=山本 遊児 (やまもと・ゆうじ)さん

水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員

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http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr
>>月刊ダイバーで連載中

文・解説=中島 徹也 (なかじま・てつや)さん

久米島町教育委員会 久米島博物館学芸員/別府大学卒業

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Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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