麗しきケラマブルーに染まる阿嘉島 沖縄ダイビング

沖縄本島西の沖、約40kmに浮かぶ慶良間諸島。絶品のサンゴ礁や神々しい地形美、極上の癒し風景に溢れ、国立公園に指定されるこの海をぜいたくに潜り巡るなら、島に滞在するスタイルをだんぜんオススメしたい。中でも、のどかな空気が心地いい阿嘉島は、ケラマラバーがたびたび恋しくなるディスティネション。人口わずか300人、純真無垢で素朴なこの島がくれる、むきだしの自然とまっさらな自分に出会う旅へ。 写真=尾﨑 たまき 文=湊 亜弥子 取材協力=マリンハウスシーサー阿嘉島店

Access

阿嘉島へは、沖縄本島から定期船で向かうのが一般的。 那覇空港からタクシーで約 15 分ほどにある泊港から、 高速船「クイーンざまみ」で約 50 分(通常1日2便、 7〜8月は3便)、「フェリーざまみ」で1時間半(1日 1便)。船便が欠航の場合などは空路でのアクセスも可。 エクセル航空のヘリタクシーをチャーターして慶良間空 港(外地島)へ、約 15 分で到着する。

悠久なる美ら海に咲き誇るサンゴ礁

「最近、サンゴが一面びっしりに復活してきたエリアがあるんです。20年ぶりくらいに昔のケラマが戻ったような景色なので、ぜひ見てもらいたいです!」

〈シーサー阿嘉島店〉のガイド、三浦陽さんのそんなひと言にたちまち心が浮き立った。阿嘉島を囲む慶良間諸島は2014年、麗しきサンゴ礁や生態系、澄み渡るケラマブルーなどが讃えられ、国立公園に指定された。その類いまれな豊かさはますます賛美を集めているが、それでも長年この海を見てきた人に言わせれば、かつてのケラマはこんなものではない。世界で指折りと称されるこのサンゴの楽園も、数十年 にわたって水温上昇や台風、オニヒトデの食害や開拓などに蝕まれ、見る影もなく姿を消したエリアも多い。

昨年も世界規模で白化現象が加速したと報じられたこともあって、予期せぬ歓喜に後押しされつつ復活ポイントへ。エントリーしたての浅瀬で待っていたのが、視界いっぱいにきらめくコーラルガーデンだ。 「毎日潜っているといくつかのエリアで回復傾向にあるなとうれしい実感があります。このまま何のストレスもなく育ってくれたら」と三浦さん。ケラマにみなぎるたくましい生命力に、冒頭から魅了された旅の始まりだった。

01.潮当たりがよく、赤白オレンジなど鮮やかなイソバナが密生する「中内瀬」は竜宮城に迷い込んだよう
02.数千単位のギンガメアジが渦を巻く粟国島。こちらから突っ込むのはルール違反だが、群れが目前まで迫ってくることも
03.神秘的な光と影のレリーフが美しい「新田浜」は、ケラマで必潜の洞窟ポイント

ワイルドなケラマを縦横無尽に潜り巡る

阿嘉島、慶留間島、座間味島、渡嘉敷島の有人島を含め、大小20余りの島に囲まれたケラマは、世界に誇れるサンゴ礁を筆頭に多彩な表情を併せ持つ。島々に守られた内海、そして周辺の外海をどちらも潜り巡れる魅力から、初心者からベテランまで通いつめる聖地的な海だ。取材中も年に数回は訪れるというゲストたちとごいっしょしたが、三浦さんはヘビーリピーターをも飽きさせないガイディングに信頼が厚く、国内ベストガイドの上位にランクインする実力派。ポイント開拓や調査にも余念がなく、東西南北へ幅広く連れ出してくれたおかげで、たくさんの感動ドラマに出会えた。

まずはワイルドな一面から。ケーブやトンネルといった地形も珠玉のケラマは、「新田浜」や「うなん崎」に代表される洞窟で青光のオーロラを仰ぎながらの冒険がたまらない。巨岩が豪快にそびえ立つ迫力ポイントも多く点在し、「佐久原隠根」や「男岩」ではマクロ探しに興じるそばで、グルクンの群れが大河のように横切る。魚影が格段に濃くなる夏は、それを狙う大型回遊魚も増えて見応えたっぷりだ。

ケラマらしい艶やかな情景に魅せられたのが、屋嘉比島にナカチンシ ある「中内瀬」。「潮が速めなのであまり入らないんですが、竜宮城のような”ザ・ケラマ”を感じられる、僕も大好きなポイントです」と三浦さんもほれ込む。山脈と渓谷を縫って進むドリフトがアドベンチャラスで、移りゆく景観にはイソバナが咲き乱れ、ハナダイの乱舞も情熱的。その極彩色はケラマブルーにひときわ映え、夢見心地で散策しているとロウニンアジに擦れ違ったり、ヤギをのぞけばピグミーシーホースも発見、と垂涎アイドルたちもオンパレードだ。ケラマには50以上ものポイントがあるが、阿嘉島拠点なら5〜15分で行けるので船酔いもノンストレス。屋嘉比島、久場島、下曾根エリアにひしめく外洋ポイントへも、阿嘉島発ならどれもアプローチがしやすい。さらに北西20kmの洋上には手つかずの海、渡名喜島がある。那覇からは1時間半かかるところ、阿嘉島発では35分。代表ポイント「五六の崎」を潜ると、通称「ブルーコーナー」と呼ばれるにふさわしい垂直なドロップオフに色彩も数も桁外れの魚たちが舞い、イソマグロなどの大物も続々と。さらに北へ、粟国島まで足をのばせばギンガメアジのトルネードにも圧巻のひと言。粟国島は7月末までの好条件に限るが、2島への遠征もタイミングが合えば体感しないともったいない。

01.渡名喜島「五六の崎」ではカスミチョウチョウウオも圧倒的な密度。日曜限定の「ナカルマ」も狙いたい
02.海況を繊細に読み分け、ワイルドな海も安全第一に案内してくれる三浦さん。入念なポイント調査を重ねた経験値はスタッフからも一目置かれる
03.2年前に就航した『JUMP号』。広々としたデッキはエントリー&エグジットしやすい

04.透明度50mにもなる渡名喜ブルーに包まれて爽快にドリフト
05.キンセンフエダイの群れが映える「佐久原」の隠れ根。岩肌にはウミウシやエビ・カニ類などのマクロも豊富
06.「佐久原」砂地には巨大な漁礁ブロックも。アカククリはこのジャングルジムがお気に入り
07.「中内瀬」でピグミーシーホースをみっけ!

海の懐と島の優しさに心をほどかれる

この海が愛される大きな理由は、極上の癒やしにもある。島々が天然の防波堤となる内海は年間通して穏やかなため、初心者からシニアまでリラックスして潜り回れる。ただし、地元ダイビングサービスしか入れないポイントも多く、楽しめる海がぐんと広がるのも島ステイならではの特権だろう。

たとえば阿嘉島の南にある「前浜」。根を覆うキンメモドキやスカシテンジクダイの群れはケラマを象徴する夏の風物詩だが、ここの群れぐあいは規格外。金銀揺らめく躍動を眺めていたら、群れのカーテンをかき分け、根の奥から寝ぼけ眼のアオウミガメがぐわんと飛び出してきた。聞けばここはカメのお気に入りな寝床とか。他にも、パウダースノーのような白砂と砂紋が流麗な「嘉比」、ケラマハナダイ発祥の根や砂地のマクロ観察が楽しい「ウフタマ」など、心を潤す瞬間を挙げれば切りがない。静かな水面には青空がケラマブルーに溶け、ピースフルな海に包まれる至福も、心ゆくまで堪能することができた。

大満足の水中散歩を終えて港へ帰ると、阿嘉島のゆるりとした空気が出迎えてくれる。ケラマ一のどかな風情が漂うこの島には、信号もコンビニも、便利なものはほとんどない。物や情報に溢れ、頭を複雑に使いすぎる日常のプラグは自然と抜かれ、心身のリズムも島時間にスローダウン。過ごし方はシンプルに、何も考えずにくつろいだり、心の赴くままにイマココを感じて楽しむだけ……それが最高に心地いいことを思い出させてくれる。島を巡るなら自転車を借りて大自然を駆け抜けたり、「ニシバマ」などの絶品ビーチでのんびりしたり、展望台から息をのむ夕景を眺めたり。おいしい島ごはんや、にこやかでおおらかな人々との交流も心の栄養。そんなこの島の包容力は旅が終わった日常でもふと恋しくなって、何度訪れてもまた阿嘉島を好きになってしまうのだ。

さて、今号が書店に並ぶ6月10日前後はちょうど大潮回り。ケラマの海では月明かりの下で、サンゴがいっせいに産卵を迎える頃だろう。死滅するサンゴには心が痛むが、その死骸もまた新しいサンゴが育つ豊かな土壌となり、次の世代のサンゴ礁と無数の生命を支えていく。ケラマに通って20年近い私も、この海の尊さと未来を見守りながら足を運び続けたいとあらためて思った。

01.「前浜」の根からサプライズ登場してくれたアオウミガメ。ここでの遭遇率は2割ほどというが、ウミガメには他のポイントでもたびたび出会えた
02.「ニモ」で人気のクマノミも、ケラマには6種類が生息する
03.「ウフタマ」の砂地はヤシャハゼやタツノハトコなど、マクロ被写体もあちこちに
04.慶良間で最初に発見されたことから命名されたケラマハナダイ
05.「ウフタマ」には魚類学者の益田一氏が初めてケラマハナダイを発見した益田岩が。キンメモドキも根を黄金色に輝かせる
06.「字論の崎」は一面に群生するユビエダハマサンゴにパープルのハナゴイが舞う
07.砂紋の描画がひときわまぶしい「嘉比」
08.阿嘉島と慶留間島にのみ生息するケラマジカは天然記念物。道端や浜辺でばったりと出会える。阿嘉大橋をバックに、前浜ビーチにて
09.港近くにこぢんまりとした集落がある阿嘉島は、商店と飲食店が数軒ずつあるのみ。昔ながらの古民家が並び、おじぃやおばぁの優しい笑顔が出迎える
10.周辺離島を結ぶ定期船も行き交う

アマグスク(天城)展望台

阿嘉集落から徒歩圏内で行ける絶景ビューポイント。太陽が水平線に沈む頃には島の人や観光客がのんびりと集まってきて、美しい夕日を観賞。眼下のビーチへ下りるのもオススメ

トラットリアバール ゲルマニヨン

阿嘉大橋を渡ったお隣り、慶留間島の絶品イタ リアンもぜひ。甘み凝縮の自家栽培野菜と新鮮 な島魚が奏でる一皿一皿は芸術的な美味しさ。 昼夜とも要予約(tel. 098-987-2650)

とっておきの島旅が、ここにはある
マリンハウスシーサー阿嘉島店

ケラマトリップにあふれる感動とくつろぎをくれたのは、創業34年の老舗人気店〈シーサー阿嘉島店〉。徹底した安全ダイビングはもちろん、快適さを尽くした施設とサービス、スタッフのホスピタリティが光る魅力から、リピーター率が圧倒的に高く、連日幅広い客層で賑わっている。

マリン設備はケラマ一の充実ぶりを誇り、ダイビング専用ボートはトイレや温水シャワーをはじめ、使いやすさをとことん追求した3隻を駆使。経験レベルやリクエストに応じたチーム分けも、柔軟に心配りをしてくれる。それも専属船長が舵を取るため、爽快なドリフトダイビングも自由自在。1ダイブごとに島へ帰港するスタイルなので、休憩やランチもゆったり取れたり、眺望抜群の屋上でくつろぐジャグジータイムも最高のリラクゼーションをくれる。

3階建ての建物には、清潔感あふれる洋室・和室を揃えたペンションと、レストランを併設。居心地のよい空間と合わ せて、ゲストが口をそろえて絶賛するのが食事だ。経験豊富な専任シェフが、その日に港で仕入れた新鮮な海の幸や沖縄食材をふんだんに使い、朝昼晩と和洋折衷、多彩なメニューでもてなしてくれる。夕食が終わるとログ付けがてら、スタッフやダイバー同士が集まり愉快なゆんたく(飲みだんらん)を楽しんだり、夜空がきらめき始めたら満天の星空を見に出かけたり。老若男女、多国籍な海外ゲストや一人旅も多いが、みんなで同じ海を分かち合い、アフターダイブものんびりとボーダーレスに仲よくなれる。そんなところも、リピーターをひきつける魅力に他ならない。

そして心に残るのはやっぱり、ゲストに温かく寄り添うスタッフたちの姿と、明るくてアットホームな空気感。心あたたまるおもてなしがかなえる、くつろぎステイと感動至極のダイビング……再来を約束して島を離れるゲストたちの笑顔が、何よりもその魅力を物語ってくれた。

01. 毎日大勢のゲストが集い、記念ダイブもみんなでワイワイとにぎやかムード!
02. 見晴らし抜群の屋上ジャグジーもゲスト憩いの場。のんびりくつろいだ後はそのままお部屋へ

03.『JUMP 号』の就航で、外洋や遠征がぐっと快適に。体力に自信のない女性やシニアも安心のこだわり設計が随所に
04. 日本人はもちろん、多国籍なゲストも毎日のように乗船。 こちらのカップルはデンマークから
05. ナイトロックスも対応。ファンダイビング利用はもちろん、講習も開催

06.機動力や快適さはもちろん、ピンクのデザインが女性に人気の『HAPPY号』
07.3階建ての店舗施設は、絶景をのぞむ前浜ビーチまで2ブロックという好立地
08.スタッフやダイバーどうし、泡盛を囲むゆんたくタイムも楽しいひととき

09.1階から3階まで、くつろぎの和洋室がそろう。トリプルルームは家族連れにも人気だ
10.朝夕はぜいたく料理がずらりと並ぶビュッフェスタイル。手前から、カジキのレアフライ、モズク酢、豆腐チャンプル、特製煮込み三枚肉など
11.昼休憩もレストランでのんびりと。酢豚定食やタコライスなど、ランチも作り手の温もりがあふれる

 

PICK UP POINT

金曜日は
「ナイトダイビング」が熱い!

6〜10月までの毎週金曜は「ゴールデンナイト」と題してナイトダイビングを開催中。昼間と違う、魚たちの夜の素顔に出会ったり、ブラックライトを使って蛍光色に光るサンゴを観察したり。1名からでも参加は可能だ。

「スターツアー」で
天の川を仰ぎに

昨年から始めたスターツアーも大好評!明かりの少ない阿嘉島なら、北斗七星や夏の第三角形、天の川など、満天の星空をロマンチックに堪能できる。新月前後の2週間ごとに開催、ギターの生演奏をしてくれることも。

おトクが満載な
「プレミアムカード」

プリペイド式の「プレミアムカード」は、リピーターの9割以上が愛用中!シーサー各店のマリンメニューがいつでも割安価格で楽しめ、ショッピングなどもこれ1枚でOK。家族や仲間どうしでもシェア利用できる。

若者&シニアにうれしい
会員制度も

25歳以下対象の「U25」に入ればダイビングや宿泊などが特別価格に。50歳以上が対象の「スローダイブ」なら、3か月器材預かり&フル器材レンタルが無料などのうれしいサービスも。どちらも入会金・年会費は無料。

Information

マリンハウスシーサー 阿嘉島店

沖縄県島尻郡座間味阿嘉162
TEL. 0120-10-2737

沖縄県内に姉妹店を併せて6店舗を構え、フィリピン・セブ店も新設した、県内最大規模の老舗ダイビングサービス。経験豊富なガイド陣は約10名常駐し、宿泊・厨房スタッフとともに抜群のチームワークで、海と島ステイをトータルでアテンドしてくれる。

AUTHOR

Takeuchi

DIVER ONLINE 編集部

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