水深5mで異常な爆音 耳抜き不良で外リンパ瘻に 安全なダイビングのために Vol.24

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。 <ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。 実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

水深5mで異常な爆音 耳抜き不良で外リンパ瘻に

ダイビング歴13年のMさん(500本/女性)

水深5m付近で耳抜き不良にもがいていたところ、突然の爆音とともに激しいめまいに襲われ、外リンパ瘻を発症した体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
ダイビング歴13年、今は伊豆をメインに、年に数回リゾートで潜る私は、これまで大きなトラブルもなくダイビングを楽しんできました。ところが、去年の9月の体験で、ダイビングがドクターストップになった上、あんなに大好きだった海に恐怖心さえ覚えることとなったのです。

その日はインストラクター2名を含む仲間8人で、伊豆へ1泊2日のダイビング旅行に出かけていました。1日目は最大水深30mのポイントを2本潜り、恥ずかしながら2本目にDECOを出してしまった私。減圧停止は軽く、EX後もコンピュータは正常に稼働していましたが、安全のため、2日目は水深も浅めのビーチで潜ることになりました。

そこはスロープからENすると、水深2〜5mのゴロタが100mほど続き、沖に砂地が広がるビーチポイント。私たちもさっそくENしてインストラクターを先頭にゴロタを進み、沖に向かって泳ぎ始めます。

ところが、この日はうねりが強く、EN早々に吐き気に襲われます。気持ち悪さを我慢しつつ、深くなる水深に耳抜きをしますが、耳がなかなか抜けません。私はもともと耳が抜けづらく、昔、水泳部の頃に何度も中耳炎を患っては手術を受けたため、鼓膜も弱く、無理はしないように潜ってきました。ときおり、水中でめまいがすることもありましたが、すぐに治まる程度だったので、専門医に相談したこともありませんでした。

耳抜きの最中に爆音 高速回転する視界

水深4〜5mを行ったり来たりしながら、耳抜きを繰り返します。うねりが身体を左右に揺らし、吐き気もどんどん加速する中で思い切り力み続けた、その時です。「バリバリーーッ」耳の中でいまだかつてないほどの爆音がしたかと思えば、耳と頭全体に激痛が駆け抜けました。あまりの異音と激痛にビックリした私は、つぶっていた目を開けると今度は目の前が高速回転……ぐるんぐるんと激しいめまいに襲われ始めました。

耳と頭の割れるような痛さ、そして洗濯機に放り込まれたような速さで回転する視界。私は漠然と、あの爆音がした瞬間に、耳の中で何か起こってはいけない異常が起こったのだろうと察しました。 かろうじて、身体を立たせて海底のゴロタに足を伸ばし、身体を固定してみようとします。私は最後尾を泳いでいたので、仲間たちも私の異常に気づくはずもなく、両手でマスクとレギュレーターを押さえたまま1人立ち往生してしまいました。激痛とめまいは容赦なく私をパニックへと導き、うねりのせいか、めまいのせいか、身体全身も回転するような感覚まで押し寄せてきた次の瞬間、「わたし死んじゃう……もうダメだ!!」

水面に出ても治まらないめまい

ENしてわずか7分、水深5mという浅瀬であっという間に理性を失った私は、どこが水面かわからないままにフィンキック。息を吐きながら無我夢中で水面を目指しました。もともと立ち姿勢だったため、なんとか水面に出ることができ、すぐにBCに給気します。水中はうねっていましたが、水面は波もそれほどありません。しかし、水面に出ても視界はぐるぐると回り続け、その場から動くことができません。

その時、仲間のインストラクターが浮上してきてくれましたが、詳しい説明もできず、迷惑もかけたくなかったので「ごめん、上がる。1人で戻れるから平気」とだけ伝え、おそるおそる岸へと水面移動を始めました。

「外リンパ瘻」の診断でダイビングが禁止に

浮上後、激痛と吐き気は少し和らいだものの、めまいは相変わらず。岸に戻るにも蛇行しながら、やっとの思いでEXしました。他にダイバーがいなかったので、私はEXと同時に波打ち際に倒れ込み、しばらく様子を見ますが、いっこうに治まらないめまい。私は仕方なくふらつきながら陸に上がり、横になって休みました。

その後、耳・頭の痛みとめまいはじょじょに消え去りましたが、激しい耳鳴りや違和感が続いたため、2本目はリタイア。

それから数日後、ダイビング専門の耳鼻科で診てもらったところ、内耳膜の破裂による「外リンパ瘻」との診断。これは耳抜きで力んだときに内耳の膜が破れ、内耳内リンパ液が外に漏れ出してしまう疾患だそう。内耳の中に気泡も出来るため、先生は「減圧症と間違われやすい」とも言っていましたが、前日のDECOが関係しているかはわかりません。そして完治とリハビリのため、しばらくはダイビングも禁止となりました。さらに、耳抜き検査をしてもらったところ、誤った耳抜きをしてきたことが判明し、以前のめまいも、今回の外リンパ瘻も、耳抜き不良で潜り続けたのが原因とわかりました。耳抜きの仕方を改善するべきと言われ、先生の指導のもと、正しい耳抜きトレーニングを積むこと半年。リハビリ期間に少しずつ自信も取り戻せた私は今ではダイビングを再開でき、それ以来は水中でめまいがすることもなくなりました。

PADIコースディレクターからのコメント

強く力む耳抜きはNG 正しい方法を日頃から実践

水中で異音がした場合、鼓膜や内耳の異常がまずは考えられます。潜り始めてからあまり時間が経たないうちに発生することの多いトラブルの1つです。できる限りサポートを受けて、慌てずにEXしてください。激しいめまいに襲われサポートも受けられず、前後左右もわからない場合、自分が吐く泡が向かうほうが水面です。

耳鼻科の医師によると、外リンパ瘻は中耳の急激な圧変化が主原因。また、間違った耳抜きを続けていると鼓膜や内耳への負担が蓄積し、発症することも。耳抜きは、強く力むことが間違いです。必要な量を「強く」ではなく時間をかけて送り込むこと。時間をかけるというのは、力み続けるのとは違います。こまめに少しずつ何回も空気を送るというイメージです。講習ではバルサルバ法での耳抜きを教わることが多いと思いますが、どうしても力みがちになるのが難点。水に入る前に鼻をかむ、水面で耳抜きをする、つばを飲み込む、首を左右に大きく曲げるなど、自分に合った耳抜きの方法を探してみてください。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

 

 

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん

静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

>> ダイブテリーズ/DIVE TERRY’S
http://www.terrys.jp/

AUTHOR

Koga

DIVER ONLINE 編集部

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