レギュレーターを蹴飛ばされ緊急浮上 安全なダイビングのために Vol.44

水中で起こりうるさまざまなトラブルを、体験談形式のケーススタディで紹介。PADIコースディレクターが潜水トラブルの原因、対策法をアドバイスします。安全潜水を考えるきっかけに、また潜水事故を防ぐためにお役立てください。 ダイビング歴2年、経験本数50 本の女性。春濁りの中ナイトダイビングをした際、レギュレーターをフィンで蹴飛ばされてしまい、そのまま急浮上!!!

レギュレーターを蹴飛ばされ緊急浮上

2年前にダイバーデビューした私は、数ヶ月に1度、伊豆などに通っています。これは昨年の春に大瀬崎の「湾内」でナイトダイビングをした時の体験です。
潜るときはいつも、Cカード講習からお世話になっているショップのツアーに参加していて、1年前にはAOWも取得しました。その時初めてナイトダイビングを体験してから、夜の海にも好奇心をかき立てられていた私。今回は1泊2日のツアーで、初日の昼間に2ダイブした後、ナイトダイビングを予定していました。

春濁りで視界1m の夜の海。顔をつけた瞬間から恐怖におびえる

ゲストは私を含めて4人。私はほとんどドライスーツで潜ってきたので、寒さなどには慣れていました。しかし、海の中はちょうど春濁りの時期を迎えていて、透明度は1~2m。経験本数は30本近くでしたがここまでの濁りを経験するのは初めて。昼間の2ダイブも、あまりの視界不良に恐怖を感じたほどでした。ナイトダイビングにはひかれつつも、「こんな透明度の中、夜に潜るなんて……」と、正直なところ辞退したい気持ちでいっぱいでした。
それでも周りの雰囲気に押され、いっしょに潜ってみることに。太陽が沈むのを待って、いまだかつてない緊張感のなか、ゆっくりとビーチエントリーします。そこから沖へと水面移動をしますが、ライトの光は目先の浮遊物を照らすばかりで一寸先は闇。その様子にますます恐怖が増していきながら、沖合いの潜降ポイントに到着。ロープ伝いにみんなで順番に潜降していきました。
水底には無事に到着したものの、ダイバーの姿はまるで見えず、暗闇の中を5人の水中ライトが照らす光がぼんやりと浮かび上がるのみ。「こ、怖い……」私はすぐにでも浮上したい気持ちになったのですが、かといって1人で別行動をとる勇気もありません。しかたなく、みんなのライトの光を頼りに進み始めました。
しかし、しばらく泳いでいるうち、昼間は一面緑色のモヤの中を進むのみでしたが、それに比べると夜のほうがライトの導きが目印になると感じられてきて、少しずつ落ち着きを取り戻しました。みんなの光を追いかけながら進み、所々で着底してはインストラクターが寝ぼけ眼の生き物たちを見せてくれます。その様子を見て一瞬テンションは上がるものの、やはり恐怖は拭えずまったく楽しめません。おまけに、海底は砂地で、先を泳ぐダイバーが砂を巻き上げているのか、進むほどに視界はかすんでいくようにも感じました。そうして潜水時間30分近くがたち、どうやら浅瀬のゴロタ付近に戻ってきたようでした。私はホッとひと安心しながら、安全停止がてら佇んでいた、その時です。私の目の前を誰かが通り過ぎた次の瞬間、フィンで私のレギュレーターを思いっ切り蹴飛ばして行ったのです。

レギュレーターが吹き飛び、海水が流れ込むまま一気に水面へ

もちろん対処する間もなく私のレギュレーターは口から外れ、大量の海水が喉の奥へ流れ込んできました。私は一瞬の出来事にコントロール不能になり、そのまま水面へと一目散に急浮上してしまいました。海水も誤飲していたので、息を吐きながら浮上したかは覚えていませんが、水深は5m前後からの緊急浮上だったと思います。頭の中は真っ白でしたが、水面に顔を出した直後からせき込み続け、気づけば助かった安心感で放心状態になっていました。
そんななか、他のメンバーも水面に浮上してきて、インストラクターが駆け寄ってきてくれます。私の様子に異常を感じた彼は、そのまま私を曳航してくれて、なんとか岸へと戻ることできたのでした。
EX後、休みながらインストラクターにトラブルについて話しましたが、レギュレーターを蹴飛ばした人が誰かはわからず。突然の出来事で、おまけにあの視界では私も犯人の特徴を確認できなかったので、それ以上は追究しませんでした。幸い減圧症などの症状も感じられなかったので、翌日も2ダイブしましたが、春濁りとナイトダイビングは二度と経験したくない気持ちです。

視界不良のダイビングは、他ダイバーとの距離感を把握することが肝心

春濁りの中でのナイトダイビングで、他のダイバーと接近しすぎたため起こったトラブルです。濁っているとはいえ、ライトを持っているので、状況はぼんやりと見えたはずです。周りのダイバーの動きを把握して、適当な距離を保つよう心がけましょう。また、もしレギュレーターが外れてしまっても、慌てずにリカバリーできるだけのスキルをマスターしておくことも大切です。今後は突然の状況でもライトを落とさないよう、ストラップなどを使い持ち方の工夫をしましょう。

コメント=我妻 亨( PADIコースディレクター)

>> ダイブテリーズ/DIVE TERRY’S
http://www.terrys.jp/

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Koga

DIVER ONLINE 編集部

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