ブランドの世界観に「フロンティアへの挑戦」を掲げるファーブル・ルーバ(写真右は日本総代理店スイスプライムブランズの代表、Luca Orduna氏)。フリーダイビングを始めてわずか3年でCNF種目の世界記録(2016年当時-72m)を樹立し、トップフリーダイバーとして挑戦をし続ける木下選手。
DIVER8月号(7/10発売)の誌面で、今年5月のカリビアンカップで、FIM種目(ロープをたぐって潜る。フィンはなし)で-86mという日本記録を塗り変えたことを紹介したばかりだったのですが、7月のバハマの大会期間中には、-88m(日本記録)、-91m(日本記録)、-94m(世界記録)、-97m(世界記録)と潜るたびに記録を塗り替えていきました。
記録は男性と女性とに分かれていますが、とくに女性選手の記録更新には目を見張るものがありました。3種目の競技を通して総合の1位を獲得したのは、イタリアのAlessia Zecchini選手。木下選手が、大会2日目にFIM-88mで日本記録を更新をしていたのですが、4日目にはAlessia選手が-93mの世界記録を樹立。木下選手は5日目に-91m、大会7日目に-94mの世界記録を更新すると、翌8日目にはAlessia選手が-96mでさらに世界記録を上書き。そして、大会9日目の最終日は木下選手が-97mを成功させて、FIMの女王となりました。
木下選手のバディともいうべき存在のHANAKO選手は、CWT(フィンをつけて垂直に潜る種目)という花形種目に絞っての参加で、HANAKO選手とAlessia選手のCWT種目の争いにも注目が集まりました。じつは昨年のVertical Blueの大会では、HANAKO選手が-103mという世界記録を樹立したのですが、そのわずか20分後にAlessia選手が-104mのダイブを成功させたという経緯がありました。今大会8日目には、-106mの世界記録を出したHANAKO選手。翌9日目(最終日)には、Alessia選手が-107mを成功させ、Alessia選手の直後に潜ったHANAKO選手も-107mを狙いましたが、浮上の最後でブラックアウトをしてしまい失敗……。それでも昨年の大会までは、女性のCWTは長らく-101mの記録が破られないままだったという状況と照らし合わせると、いかにハイレベルな戦いとなっていたかがわかります。
いったい人はひと息でどこまで潜れるのでしょうか……
ちなみに今回の男性選手の記録は、ロシアのAlexery Molchanov選手が、CWTで-130m、FIMで-125mという世界記録を更新しています。木下選手が2016年に-72mという女性の世界記録を樹立したCNF(フィンをつけずに垂直に潜る種目)は、Alessia選手が今回-73mを潜ってさらに更新されました。
10周年という節目を迎えたVertical Blueは、終わってみると10個の世界記録が生まれ、国別記録に至っては42個も生まれるという、これまでの大会にはない記録ラッシュとなりました。そんな大会の様子を木下選手に伺いました。
今回の大会は記録の塗り替えが驚異的でしたね。
水を通して選手同士のいい調子が波及していたと思います。過去の大会では、失敗した直後の選手がピリピリしているとそうした緊張感が伝わってきていましたが、今回の大会は失敗しても「そういうこともあるよね。また次のチャンスに」というように終始穏やかな雰囲気だったと思います。私自身も大会のいい流れに乗ることができたんだと思います。じつは持病の腰痛が悪化していて、フィンを使う種目とノーフィンの種目はほとんど練習ができませんでした。CWTも今回100mの記録を出せましたが(女性は6人目という快挙)、これも1回しか潜れないだろうからと集中できました。またあまり力むと酸素を使ってしまうのですが、今回は腰痛の不安もあったので、あまり力まないようしていたことがかえってよかったのかもしれません。
大会は一般のかたの観戦も可能なのですか?
もちろんです。これまでは5月に開催されていたのですが、今回は7月の開催ということで、バケーションを楽しんでいる人たちや地元の人たちが、フロートにつかまりながら、競技を間近で観戦していましたよ。「ブルーホール」は誰ものでもありません。皆が行ける場所ですから。
まだまだ記録は伸びるのでしょうか?
まだ改善できる点があります。たとえば日本人女性は体格が小さいということもあるのですが、同じ深度を海外の男性選手が潜るのと私が潜るのでは30秒近くの差が出てしまったりもします。腕も決して有利な長さではないので、もっと早く動ければもっと記録が延ばせる可能性がじゅうぶんにあります。ただ早く身体を動かすと酸素を早く消費してしまうので、そう簡単にはいかないのですが。それでも、今回の大会にもアメリカ人の女性選手が参加していましたが、彼女は60歳。今でも国別記録を更新するなど、長く選手生活が送れる競技なので、まだまだ時間もあります。
同じ深度を潜っても、選手によって潜り方というのは違うのですか?
はい、選手ひとりひとりが、それぞれ戦略というようなものを持っていて皆計算して潜っています。人によって得意な種目、苦手な種目もありますから。水深何メートルでこういう動きをして、こういう状態になったら次はこうしてとプランがあります。耳抜きに関しても特殊な技術があります。感覚だけで潜っているわけではありません。
今回木下選手は、FIMで-97m、CWTで-100mを潜っています。フィンの有無で3mしか違わないというのは驚きです。
はい、やっぱりフィンの推進力はスゴイのですが、私自身もじつは3mしか違わないところにフィンなしのFIMで到達してしまった!と後から考えると自分でもびっくりしています。
今回の大会では、水中ライブ映像が導入されていましたが、競技中カメラは気にならなかったですか?
あまり気になりませんでした。むしろ、これまで深度が深くなればなるほど真っ暗になっていくので、選手は小さいライトを頭上に、ちょんまげのようにセットして潜っていましたが(笑)、カメラ撮影のためにライトが備っていたので、視界は明るくなりました。
今回木下選手は、FIMで-97m、CWTで-100mを潜っています。フィンの有無で3mしか違わないというのは驚きです。
今後の予定は?
9月にイビザ島、10月にはギリシャと大会は続きます。でもその前に、8月21日に〈ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄〉がオープンします。じつはこのホテルのアクティビティアンバサダーを務めていて、オープン直後にはゲストと一緒にプログラムを行ったりと、8月下旬~9月中旬は沖縄で活動したり、地元の長崎で過ごしたりする予定です。
木下選手が競技中も日常生活でもつねに愛用しているファーブル・ルーバのダイバーズウォッチ「レイダー・ディープブルー」(写真左)。2年間ですっかりベゼルの色が褪せている。ベゼルのみの交換も可能だが、2年間つねに木下選手とともにいた記録でもあり、それもまた代えがたい味わい。写真右は、Luca氏の「レイダー・ディープブルー」。
帰国直後の木下さんとランチをご一緒する機会をいただきました。バハマの日差しをたっぷり浴び、すてきな笑顔を見せてくれました。1年の半分以上は大会や練習、レッスンなどで海外で過ごしているということもあり、英語も堪能で、かっこよすぎます!!
ただいま木下さんも愛用しているファーブル・ルーバの新作発売イベントが各地で開催されています。
【タカシマヤウオッチメゾン東京・日本橋】
ファーブル・ルーバフェア 8月1日(水)→ 8月14日(火)
ファーブル・ルーバコレクション 8月1日(水)→ 8 月31日(金)
【BEST新宿本店】
ファーブル・ルーバフェア 8月1日(水)→ 8月31日(金)
【A.M.I 名古屋パルコ店】
ファーブル・ルーバキャンペーン 開催中 → 8月15日(水)
【oomiya大阪心斎橋店】
8月2日ファーブル・ルーバ正規取扱店に。新作や現行モデルのフルコレクションを展示。
1737年にスイス、ロックルで誕生。以降281年間、機械式時計を作り続けている。現在も「フロンティアへの挑戦」を掲げ、深海から地上最高峰まで制覇。冒険のロマンをまとう、伝統的なスイス機械式時計。