マリン
ビギナーダイバー。昨年からトレーニングしているが、なかなか上達しない。口は一人前
ジョー
経験本数100本以上の中堅ダイバー。三味線の名手らしい
蝶々夫人
知識豊富なインストラクター。しかし、セレブ一家に育ったため、世間知らずなところがある
そこのけそこのけ
皇帝様のお通りだーい
マリン:愛嬌たっぷりのかわいぃ、ナポちゃん♪
ジョー:ナポちゃん!? ずいぶん気安く呼ぶな〜。
皇帝だぞ、皇帝、頭が高〜い!控えおろぅ。
マ:ははーっ。でも、皇帝って?
蝶々夫人:老成すると頭の上の部分が出てくるんだけど、その形がフランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトの愛用していた軍帽に似ていることから、ナポレオンって呼ばれてるのよ。
マ:あ〜、あのコブね。
蝶:ただ、ナポレオンとかナポレオンフィッシュというのは通称であって、正式な和名はメガネモチノウオよ。
マ:メガネ?
ジ:ほら、目のうしろの黒いラインがメガネをかけているように見えるだろ?
蝶:コブが大きく突き出ていて体も大きなものはオス。いくつかのベラ科の仲間と同様にメスからオスへと性転換するのよ。
マ:へ〜、あんなに大きいのにベラの仲間ってちょっと驚きだわ。
蝶:最大2mほどになる、ベラ科の最大種だからね。普段は単独だけど、産卵期には3〜7匹くらいの小さな群れを作るらしいわ。
ジ:〈名古屋港水族館〉ではナポレオンの産卵行動が確認されたらしいんだけど、オスがメスを追尾する求愛行動をとった後、寄り添って一瞬のうちに放精放卵を行ったらしいぜ。
マ:見てみたいわ〜。
蝶:でも数が減っていて、〈国際自然保護連合〉のレッドリストにも記載されたのよ。食用や観賞目的の販売のために捕獲されるケースが増えているらしいわ。
マ:まだ数回しかお目にかかってないのに、ショック!
ジ:餌付けも問題になったよな。
蝶:紅海が有名ね。大きな体でゆで卵を丸呑みして殻だけを器用に吐き出すしぐさが、キュートで人気だったけど……。
マ:何が問題だったの?
ジ:みんなが卵をあげるから、太り過ぎちゃったんだよ。
マ:そっか。人間でも卵は1日1個くらいの摂取が目安だものね。
蝶:今では紅海では禁止され、食用にしていたパラオでも’06年には禁漁になったわ。グレートバリアリーフではまだ餌付けされているようだけれど、餌の量や頻度を管理して影響を最小限にしているみたいね。
ジ:自然を壊さないように、「海に遊んでもらう」というのが楽しみ方のコツだよな。