マリン
ビギナーダイバー。昨年からトレーニングしているが、なかなか上達しない。口は一人前
ジョー
経験本数100本以上の中堅ダイバー。三味線の名手らしい
蝶々夫人
知識豊富なインストラクター。しかし、セレブ一家に育ったため、世間知らずなところがある
“冷え”を侮るなかれ
身体が発する危険信号
ジョー:お前、唇が紫色だぞ! 大丈夫か?
マリン:うううう〜〜〜。
蝶々夫人:すぐに着替えて身体を温めるのよ!
マ:あ〜、着替えたら生き返ったわ。でも、まだ震えが止まらない……ブルブル。
ジ:さては、朝食抜いたな? ダイビング前はちゃんと食べて代謝熱を生産しておかないと、あっという間に冷えるぞ。水中ではヒートロスが大きいんだからさ。
マ:えっ、ヒ、ヒート?
蝶:文字どおり、熱を奪われることよ。水は大気のおよそ25倍も熱を伝えやすいと言われていて、体温より温度の低い水中では、あっという間に熱が奪われてしまうの。
ジ:エネルギー不足のときや疲労がたまっているときなんかは、発熱より放熱のほうが大きくなってより早く体温が低下するんだ。そこで無理して寒さを我慢しているとハイポサミアになっちまうぞ。
蝶:今のマリンの状態は、ハイポサミアの初期の段階ね。
マ:もう、何よ、さっきから横文字ばっかり使って。わからないじゃない!!
ジ:濡れる機会の多いアウトドアスポーツではとくに注意が必要な「低体温症」のことさ。
蝶:体温の低下、とくに重要な臓器のある胴体内部の体温が低下すると、さまざまな障害が出てくるの。震えが止まらないのも筋肉が発熱しようとしているためよ。
マ:震えの状態が初期段階ってことは、もっとひどくなるの?
蝶:そうよ。手足が思うように動かなくなって、意識が朦朧としてきて、判断力にも影響が出るから危険よ。
ジ:最悪の場合、死に至ることもあるっていうから単なる冷えと思って侮ったらダメだぜ。
マ:ひょえ〜。
蝶:20度以下を低水温と言うけれど、低水温でのダイビングは要注意よ。多くのダイバーが20度くらいを境にスーツをドライに切り替えているわ。ただ、皮下脂肪が多いほど体温は下がりにくいし、体感温度には個人差があるから一概には言えないんだけれど。
ジ:今日の水温は21度だぜ。もういいかげん、5Aのワンピースではキビシイぞ。せめてフードベストを着るとか、何か防寒対策しないと。
マ:もうすぐオーダーしたドライがあがってくるはずなのよ。 次回は完璧な防寒対策で登場するから待ってて!