映画館で見てほしい。海の危機伝えるドキュメンタリー
絶命したクジラのお腹の中から大量のプラスチックが見つかり、死んだ海鳥のお腹はプラスチックの破片ではち切れんばかり。漂着したプラスチックごみで埋め尽くされた海岸線は見るも無残です。わずか20〜30年の間に、海はどうなってしまったのでしょう。
深刻化する海のプラスチック汚染をリアルに伝えるドキュメンタリーが 『プラスチックの海』です。世界の海で何か起きているのか、撮影クルーは海洋学者や環境活動家、ジャーナリストとともに世界中を訪れ、現実を明らかにしていきます。生き物たちがいためつけられているだけでなく、私たち人間の健康も脅かされています。中には目を背けたくなるようなシーンも含まれていますが、逃げてはいけない…。
映画館で見るべきは、エンターテインメント性の高い大作や人気のアニメだけではありません。良質のドキュメンタリーを大画面で集中して見ることでメッセージがより強く感じられます。ドキュメンタリーを見に映画館へ足を運ぼうとは思ったこともなかった方も、本作はロードショーで見て感じていただきたいです。
ロビー展示で、海のプラごみ問題を考える
『プラスチックの海』を上映中の東京・渋谷の〈アップリンク渋谷〉のロビーでは、海のプラスチック汚染を取り上げた展示も行われています。
展示品の中には約30年前、ミッドウェー島の海岸に打ち上げられていたプラスチックごみもあります。驚くほど多くの使い捨てライター、さまざまなプラ製品を見ると、私たちが気づかなかったそのころから、じわりじわりとプラスチックごみは、海とそこに生きる生き物を帯びやかしていたのです。
第一線の研究者も賞賛する「真実を伝える」映画
マイクロプラスチックによる海洋汚染研究の第一人者 高田秀重さん(東京農工大学大学院教授)は、本作に以下のようなコメントを寄せています。(一部抜粋)
「プラスチックごみで埋め尽くされた海岸、深海に不気味に沈むプラスチック、レジ袋を飲み込んだり絡まったりした生物のリアルな映像から、危機感が伝わってくる。それに加えて、プラスチックに含まれている有害な添加剤やプラスチックが引き寄せてくる化学物質により、海洋生物、そして最終的には我々人間に有害化学物質の危機が迫っていることに警鐘を鳴らす。特に、プラスチック製品自体に添加剤として内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が含まれており、私達がプラスチック製品を使うたびに環境ホルモンに暴露されることが何度も描かれています。
「プラスチックはよく回収されリサイクルされているから大丈夫」と思ってプラスチックをたくさん使っている方がいたら、是非観てほしい映画です。たくさんプラスチックを使っているうちに有害な化学物質に暴露されて、体内のホルモンバランスが崩れ、免疫系までおかしくなる、そんな警告を発している映画です。プラスチック汚染は人間の健康の問題なのです。プラスチック・フリーの意義を再認識する映画でした」
『プラスチックの海』
監督:クレイグ・リーソン
出演: デイビッド・アッテンボロー、シルビア・アール、バラク・オバマ他
配給:ユナイテッドピープル 宣伝:スリーピン
原題:A PLASTIC OCEAN
100分/2016年/イギリス・香港