コラムニスト:堀口和重
vol.18 フィロゾーマ ~単体移動編~
秋になり、大瀬崎のライトトラップでは南方種などさまざまな生き物が姿を現すようになってきました。この時期からそろそろ現れる生き物がいます、それが『フィロゾーマ幼生』です。見た目だけでは、いったいなんの幼生かわかりませんよね? 実はこの生き物、イセエビ・ウチワエビ類の仲間は浮遊幼生期なのです。
この仲間は、フィロゾーマ幼生から脱皮を重ねながら成長して、ニスト幼生、稚エビとなり、ようやく皆さんが知っているようなエビの姿になるのです。ちなみに上の写真はセミエビ科ヒメセミエビ亜科のフィロゾーマ幼生です。その仲間に入る、ヒメセミエビの成体の写真こちらです。
フィロゾーマには、面白い生態がいくつもあります。数年前の夏に、クラゲに乗って登場した姿を目撃したことがあリます。実はフィロゾーマ幼生は、ゼリーフィッシュライダーとも呼ばれクラゲに乗って移動したり、捕食したり隠れたりするのです。クラゲに乗っているいい写真がなかったのでまたの機会にお見せしますね。この単体で移動するフィロゾーマはニスト幼生になる前の段階で着底の準備をしていて餌をほとんど食べないで浮遊して生活しているようです。
ライトトラップではほかの甲殻類の幼生たちと同じように光源に寄せ付けられます。まれにグルグルと前転するような動きをして、写真を撮るのに苦戦を強いられます。
さらに横から見るとこんなに薄い! ペラペラです。これも浮遊生活に適する体なのでしょうかね?
参考資料 『甲殻類浮遊幼生と刺胞動物との共生関係に関する研究』、『ずかんプランクトン』『美しいプランクトンの世界』(順不同) 協力:広島大学若林香織 助教
コラムニスト
堀口 和重(ほりぐち・かずしげ)さん
西伊豆大瀬崎の<大瀬館マリンサービス>でガイドとして勤務。好きな生物は、クラゲ類・幼生類・ホタルイカモドキの仲間などの浮遊系。水中写真家・阿部秀樹氏のライトトラップに影響を受け、3年前よりナイトダイビングが可能な日は撮影&ガイドを行っている。1986年生まれ。