INDEX
LESSON1
「ドスオホス」これぞセノーテ!光のカーテンを撮る
LESSON2
「マラビージャ」効果的な光の筋を捉えかた
LESSON3
「アンヘリータ」異色の神秘さを放つ硫化水素の層
LESSON4
「ドリームゲート」の一度は見るべき水中鍾乳洞
CLUB DIVER限定
広部俊明さんと行くセノーテツアー
カンクンでダイビングするなら「セノーテ」
セノーテってどんなところ?
メキシコのダイビングの代名詞ともいえる「セノーテ」は、土地の崩落などによりできた穴に地下水が溜まった天然の井戸。カンクンが位置するユカタン半島には、数千のセノーテがあると言われていますが、長い年月をかけて石灰質の地層を通った雨水はろ過され、高い透明度を誇っています。透き通った水中に力強い太陽の光が差し込む美しい光景は、多くのダイバーを魅了しつづけているのです。
LESSON1 「ドスオホス」で光のカーテンを撮る
おすすめルートは「バービーライン」
スペイン語で『2つ(Dos)の目(Ojos)』という意味を持つ「ドスオホス」は、一般のダイバーが入れる最大級のセノーテです。ダイビングができるルートは「バービーライン」と「バットケーブ」の2つがありますが、ここでの撮影では入り口付近がおすすめです。水底から、上を見上げるようにダイバーのシルエットを入れると、より幻想的な1枚に仕上がります。
【光のカーテンの撮影術】撮影する時間帯は晴天の午前中が狙い目!
「ドスオホス」の入り口付近は、光のカーテンがもっとも美しい絶好の撮影ポイントです。たくさんのダイバーが潜った後よりも透明度が高く、光が斜めに入ってくる午前中は、より美しい光の筋を捉えることができます。
また、セノーテでは基本的にストロボは使用不可とされているので、ダイバーの表情などを照らして撮影するのは難しいところ。光の筋をいかに美しく捉えられるかを考えて、ダイバーはシルエットにし、カメラの設定や構図を決めて撮影しましょう。
【1UPアドバイス】イメージに合わせたホワイトバランスに設定しよう
「ホワイトバランス」(WB)はやや赤みを帯びる「曇天(曇り)」モードなどに設定することで、水の青色が濃くなり、“水=青”というイメージをそのまま再現したような幻想的な雰囲気に仕上げることができます。肉眼や通常の設定で撮影した色みとも異なり、ビビットでまた違った雰囲気になります。
【1UPアドバイス】撮影前に中世浮力を見直して
慣れている人でも、セノーテは他のダイビングポイントより環境に配慮する必要があります。
洞窟で撮影する場合、いちばん大切なのは中性浮力です。比較的浅い場所が多いのでウエイトが重すぎるとBC内の空気が多くなり、水深による浮力変化が起こりやすくなります。
水底に近づいてしまうとシルトが巻き上がり、視界が遮られる恐れ、いっぽうで急浮上してしまうと鍾乳石を折る恐れがあります。鍾乳石は一度折ってしまうと永遠に修復不可能です。カメラの設定ばかりに気を取られないよう、ふだんより中性浮力を意識しましょう。
最大級のセノーテ「ドスオホス」
「ドスオホス」は地下でグランセノーテとつながっている世界最大の地下水系です。入り口から進んだ先の「バットケーブ」では、コウモリの集まる広いドーム状の空間があり、水面に顔を出すこともできます。2通りの楽しみかたができるなんとも贅沢なセノーテです。
LESSON2 水中に広がる雲海を狙え「マラビージャ」
水深30mほどにある硫化水素の層は、まるで水中に雲海が広がっているような幻想的な景色です。ライトを少し下向きに当てると、自然光が届きづらい雲海を明るく照らすことができます。ここでは穴からあふれ出す光とダイバーのシルエットを入れて、広大さを表現しましょう。
【穴から差し込む光の撮影術】光を主役に構図を決める
透明度も高く、昼間の光がまるでスポットライトのように降り注ぐ「マラビージャ」。ワイドレンズ使った縦位置の構図では、光の筋の美しさや力強さをより引き立たせることができます。
また”地底にぽっかりと開いた穴”という表現をするには、横位置で引いて撮影してみましょう。マイナス補正にすると、光線がきれいに出て暗部が強調され、写真全体が引き締まります。
【1UPアドバイス】いつも以上に深度に注意して
透明度が高く、気持ちのいい光の抜け具合が楽しめますが、周囲には深度の目安となるものがありません。撮影に夢中になっていると、あっという間に40m~50mまで落ちてしまいがちな、深度感がわかりにくいポイントです。撮影だけに集中しすぎず、中性浮力をキープして安全を確認しながら楽しみましょう。
硫化水素の層がある「マラビージャ」
「マラビージャ」は、竪穴式のセノーテで入り口は狭く、穴からのびる太くて強い光が特徴です。進んで行くと中は広く水深30mほどのところに、雲海のような硫化水素の層があります。
LESSON3 異色の神秘さを放つ「アンヘリータ」
水中で川が撮れる?
セノーテの中でも異色ともいえる「アンヘリータ」には、水深30m付近に硫化水素の層があります。中央の小島に当たって二手に分かれて漂う層は、まるで川の流れを表しているかのような神秘的な光景です。
【硫化水素を捉える撮影術】川が流れてくるように見える構図を探す
水深30mあたりにある、硫化水素の層の真ん中あたりで川が流れているように撮影できます。まずは頭の中で川をイメージ。それを元に縦、横などいろいろな構図で川に見える構図を探してみましょう。
【1UPアドバイス】広角レンズでパースを生かした写真も
硫化水素の層を際立たせるには、層の下側からライトを照らし、広角レンズを使用してあおり撮影をすると、パース(ゆがみ)が効果的な1枚に仕上がります。風景だけでなくダイバーに中心に来てもらうことで、よりユニークな作品になります。
【1UPアドバイス】ダイビングスキルに不安があれば事前に練習を
ここで注意するのもやはり中性浮力。せっかくの硫化水素の層を、立ち泳ぎで乱してしまっては、みんなの迷惑になります。また、層の下は何メートルあるかわからないほど深いため、基本的に着底はできません。ダイビングスキルに不安があれば、事前に中性浮力の練習することをおすすめします。練習とはいえ、カメラの重さでトリムは変わりますので、撮影機材を忘れずに持って行きましょう。
異彩を放つ「アンヘリータ」
「アンヘリータ」には鍾乳石がほとんどありません。水深20mほどまで潜降すると、小さな島がうっすらと見えてきて、その周りを白い硫化水素の層が覆っています。神秘的な光景が広がっているこのポイントを目当てに訪れるダイバーも多く見られます。
LESSON4 「ドリームゲート」の一度は見るべき水中鍾乳洞
地球の造形美を体感しよう
水中にもたくさんの鍾乳石があり、そのすばらしさは何度訪れても魅了されます。数千万年の歴史を感じながら、地球の造形美を体験できる絶景ポイントのひとつです。自然光が届かない場所なので、ライトをうまく活用して撮影しましょう。
【鍾乳洞の撮影術】ノイズが気にならない範囲でISO 感度を高めに撮影しよう
上部にライトを照らし、あえて下に暗い部分を残して光がほとんどない世界に突如として現れた鍾乳洞の風影を捉えた1枚。最近のカメラは高感度撮影でもノイズが出にくく、かなり優秀なので1000 ルーメンのライト2 灯でもISO 感度を高めに設定すればじゅうぶんに撮影できます。
カメラによって最大ISO感度の最高値は異なりますが、例えば最大ISO 感度が 6400 なら800 ~1600くらいまで上げて、ノイズが気になるかどうか、あらかじめ確かめておくと安心です。
【1UPアドバイス】水中ライトで優しく間接的なライティング
ストロボを使った強めの光ではなく、ライトのソフトな光で優しく照らすことで、見たままの自然な姿を写すことができます。そのままの重厚さなどを表現したいときなどに最適です。また、暗闇などでオートフォーカスが利かないときに、光を補うこともできる便利アイテムです。
ダイビングポイント
冒険心くすぐられる鍾乳洞「ドリームゲート」
乳洞に水が溜まり、水中鍾乳洞となったドリームゲートは、自然光が入るのは入り口付近だけで、あとは真っ暗な鍾乳洞が続いています。水中に差し込む光を楽しむのではなく、洞窟を進んで探検していく楽しさ、冒険心がくすぐられる人気のポイントです。
(写真=広部俊明)
CLUB DIVER限定
水中探検家&水中カメラマン 広部俊明さん同行ツアー
CLUB DIVERでは、上記で紹介したテクニックを早速実践できる、広部俊明さん同行ののツアーを企画しました。プロと一緒にダイビングができ、撮影のアドバイスも受けられる機会はなかなかありません。ツアーの模様は、雑誌「DIVER」でも紹介予定です。
カンクンへの行きかた
日本 | 成田からメキシコシティへ13時間(ダラス乗り継ぎも可) |
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メキシコシテティ | メキシコシティから空路カンクンへ約2時間20分 |
カンクン | 空港からホテルまでは陸路で30分程度 |
教えてくれたのは
広部俊明さん
水中探検家&水中カメラマンとして世界各国で活躍中。沖縄県恩納村の「マリンドリーム夢塾」ではオーナーガイドとしても活動している。1998年に、当時日本最大級の海底鍾乳洞「広部ガマ」を発見。沖縄やフィリピン、ソロモンなどで多くの海底鍾乳洞や海底遺跡を調査している。2019年5月には徳之島で日本最大級となる海底鍾乳洞を発見した。