水中カメラの発達は、水中遺跡の記録に恩恵をもたらしてきた。「ニコノスV」は、その世代の水中考古学者であれば、 感謝の念を抱く対象であった。その後、可能な限り数多くの写真撮影を効率よく水中環境で行わなければいけない現実と、電子データの普及により、デジタルカメラが、水中考古学分野でその地位を確かなものにした。近年の考古学調査のデジタルカメラ利用は、精度の高い立体地形図・遺跡図作成のための写真測量法に及んでいる。
伊良部沖海底遺跡鉄錨の水中写真測量
写真測量法は対象物全体を、あらゆる角度で撮影し、ピクセルデータから、対象物の深度データをコンピュータ上の空間に再構築し、3次元立体モデル・図を作成する技術である。水中環境でも極小の誤差での遺跡測量が可能で、3次元データを作成できる。活動時間に制限がある水中調査で、測量作業を補完する技術として、世界的に利用が拡大している。
コンピュータ上で再現された海底の鉄錨の3次元立体モデル
水中遺跡調査では、誰しもが海底遺跡を前に、歴史の一部を目にする喜びを経験する。石垣島屋良部崎沖の海底には、琉球王国時代の四爪鉄錨や完形の壷が確認されており、東海大学海洋学部の小野林太郎準教授らが、沖縄県・石垣市関係者と協力して調査を進めており、一昨年から水中写真測量法も実践している。遺跡近くの浜は、鮮やかなオレンジ色のアダンの実をつける樹に覆われているが、注意深く見れば、その木の根元に真水が流れ、かつての交易船の停泊地としての跡を残す。県内で、琉球王国時代の四爪鉄錨の実物を見ることができるのは、古く停錨地であった屋良部崎沖の海底だけである。水中遺跡の歴史性に、多くのダイバーが触れることができる遺跡の一般公開、海底遺跡のミュージアム化を、屋良部沖海底遺跡では目指している。写真測量法で可視化された3次元立体モデルは、研究者にとっての遺跡評価のためだけでなく、海底遺跡が、どのような形で今に残るのか、なぜ残っているのかを、より多くの人と考えるツールとして使われることが望まれる。
図化された鉄錨の3次元立体モデル
考古学3つの原則
「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」
考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、DIVER編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp
写真=山本 遊児さん
水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員
>>this is the link with your pubblication…under your Picture:
http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr
文=木村淳さん
水中・海事考古学者/東海大学 海洋学部特任講師/文化庁水中遺跡調査検討委員会有識者委員