美しいサンゴ礁の海でダイビング
サンゴとは?
私たちがイメージするサンゴとは、エダサンゴやテーブルサンゴなどと呼ばれるものではないだろうか。具体的には、ミドリイシ、ハマサンゴ、キクメイシの仲間などが挙げられる。それらを含むサンゴはどれも動かない上、まるでお花畑のようにも見えるため、よく植物と間違えられるが、じつはサンゴはイソギンチャクなどと同じ刺胞動物に含まれる動物だ。ただユニークなことに、組織内に褐虫藻(ルビ=かっちゅうそう)という光合成を行う藻類を住まわせているため、植物としての一面も持ち合わせている。なんとも複雑で不思議な生き物なのだ。
日本を代表するサンゴ礁の海
そんな動物であるサンゴをはじめ、石灰質の殻などを持つ生物の死骸などが長い年月をかけて積み重なり固まってできた地形のことを、「サンゴ礁」と呼ぶ。沖縄などで島を取り囲むように発達し、リーフなどと呼ばれているのがそれだ。日本でサンゴ礁が見られるのは、琉球列島をはじめ、小笠原諸島、さらに壱岐諸島でも近年見つかり話題になった。また、サンゴ礁は見られないけれど、ダイビングポイントとして有名な和歌山県・串本や高知県にはたくさんのサンゴが集まっている場所があり、「サンゴ群集」などと呼ばれている。
サンゴ礁を潜るうえで守りたいこと
1㎝伸びるのにも長い月日を要し、魚たちの隠れ家にもなっているサンゴ。サンゴ礁やサンゴ群落など、サンゴの海を潜るときには、ぜひサンゴを傷つけないように注意したいものだ。フィンでバタバタと蹴飛ばしたり、ゲージ類を引っかけたりしているダイバーをときどき見かけるが、本人は気付いていないことが多い。サンゴの近くではフィンワークは極力小さく、左右やカエル足などで中性浮力を保つように気配りを。また、ゲージ類はおなかに抱えるなどするといいだろう。動かないからといってむやみに触るのも厳禁だ。
もっと知りたい!サンゴのこと
サンゴの一斉産卵
さまざまな種類のサンゴが同時に産卵することを一斉産卵と言い、日本ではミドリイシの仲間による一斉産卵が年に1~2回(5~6月)沖縄から報告されている。同じ種類同士が同じ日、同じ時間帯に産卵することで、自分とは異なる遺伝子との交配を図っていると言われているが、どうやってそのタイミングを決めているのか? 月齢周期との関係やフェロモンのようなシグナルを出しているなどさまざまな説があるが、じつはいまだによくわかっていない。なお、サンゴの産卵は日没から深夜にかけて行われるため、ナイトダイビングでの観察となる。数が多いだけにその産卵シーンは圧巻だが、チャンスは少なく、出会えたら相当ラッキーだ。
サンゴと褐虫藻の「いい関係」
サンゴは夜になると触手を伸ばして動物プランクトンを食べるいっぽうで、共生している褐虫藻が光合成によって作り出した有機物(炭水化物やタンパク質など)も利用している。そのおかげもあって、サンゴ礁という巨大な地形を造り出すことができるのだ。また、褐虫藻はサンゴが排泄した二酸化炭素や窒素、リン、アンモニアなどを取り込んで光合成に利用しており、持ちつ持たれつのいい関係(相利共生)が保たれている。
サンゴの白化現象
サンゴと褐虫藻の「いい関係」が崩れてしまうこともある。褐虫藻は水温が高くなるなどするとサンゴから出て行くか、またはサンゴの体内で色素を失ってしまう。この褐虫藻の茶褐色の色素がサンゴ体内からなくなり、白い骨格が透けて見える状態をサンゴの「白化現象」と言う。早い段階で水温が下がればまた褐虫藻が戻り、復活することもあるが、白化現象の状態が長く続くとサンゴは死滅してしまう可能性がある。1980年以降は頻発しており、温暖化の影響とも言われている。そんな白化現象をはじめ、台風などの自然災害や沿岸開発などで、いまサンゴは多くの地域で減少傾向にある。
今、サンゴの置かれた状況は厳しいが、沖縄本島の恩納村では、ダイバーらによってサンゴの移植活動が行われており、植え付けたサンゴから産卵が観察されるなど明るいニュースもある。海に咲き誇るお花畑――その美しさをしっかりと目に焼き付けたい。