マリン
ビギナーダイバー。昨年からトレーニングしているが、なかなか上達しない。口は一人前
ジョー
経験本数100本以上の中堅ダイバー。三味線の名手らしい
蝶々夫人
知識豊富なインストラクター。しかし、セレブ一家に育ったため、世間知らずなところがある
スペシャルでもスーパーでもないsp.の正体はこれだ!
マリン:さっき水中で見た特大チョウチョウウオみたいな魚、あれはなんだろう?あ、これこれ。ミカヅキツバメウオだ〜。英語名はPlatax sp.ね。
ジョー:おいおい、それは学名だろ?
蝶々夫人:そうね、英語じゃなくてラテン語だしね。学名は世界共通の名前で、ちょっと斜めのイタリック書体にするという決まりもあるのよ。
マ:英語の名前じゃないんだ!
ジ:英語の名前はけっこうアバウトだよな。海外のリゾートでたまたまいっしょになった外国の人たちは、ミノカサゴはハナミノカサゴもネッタイハナミノカサゴもひっくるめて、「ライオンフィッシュ」って呼んでたしな〜。
マ:でも、日本は逆に呼び名がたくさんあってまいるわ〜。クロダイのことを釣りではチヌと呼ぶかと思えば、出世魚で大きさによって呼び方も変わるし、地域によっても変わるって言うでしょ。もうわかんな〜い!
ジ:だから日本には、標準和名というのがあるんだぜ。日本魚類学会で認められた日本での正式名称ってやつだな。
蝶:それと「sp.」をスペシャルやスーパーの略だと勘違いしている人が多いんだけど、違うのよね〜。
ジ:スピーシーズ=種ってことだろ。
蝶:おしいわね。意味は同じだけれど、ラテン語のスペキエースの略よ。学名を見ると、大文字で始まる部分と小文字で始まる部分があるでしょう? 人の名前で例えると前が姓で、後が名みたいなもので、属名と種小名と呼ばれているの。属はわかっていても、この下の分類まではわからないものや、この属に入るだろうと思われるものにsp.とつけているのね。
マ:じゃあ、このミカヅキツバメウオは、学術的にはまだツバメウオの仲間でくくられているってこと?
ジ:あれ? 俺の図鑑には、Platax borersiと書かれているぜ。お前の図鑑いつのだよ。
マ:え、なんで?
蝶:あらら……、こんなに古い図鑑じゃあ、情報も古いわよ。間がたてば種小名も付くし、毎年新種だって発見されているくらいだからね。
ジ:長年イザリウオの名前で親しまれていたのも、カエルアンコウと改名されたばっかりだしな。
マ:ボヤボヤしてられないわね。情報の波に乗り遅れないように気をつけなくっちゃ。