【徹底リポート】世界遺産・元離宮二条城を潜る!

1994年、ユネスコ世界遺産に登録された元離宮二条城は、徳川家の栄枯盛衰と日本の長い歴史を見守ってきた貴重な歴史遺産です。その外堀を潜って清掃するというかつてないイベントが、6月14日に開催されました。築城400年以来、誰も目にしたことのない外堀の水底から引き揚げられたものとは、いったい何だったのか……。DIVER小森がリポートします!

INDEX

1.誰でも3分でわかる!二条城
2.イベントの主催者、田中嗣人さんにインタビュー
3.いざ!外堀へダイブ
4.参加者の声

誰でも3分でわかる!二条城

京都市中京区に位置し、日本100名城にも認定されている二条城。歴史的な観光スポットが数多くある京都ですが、その中でも一二を争う絶大な人気を誇っています。日本のみならず、世界各国から観光客が足を運ぶ二条城とは、一体どんなお城なのでしょうか。ここでは、二条城の歴史とその魅力について触れていきます。

正門にあたる、東大手門。行幸時には天皇を見下ろさないようにとの配慮から、一重の門に建て替えられたと言われている

徳川家との関わり

二条城は、1603年に江戸幕府初代将軍・徳川家康によって築かれました。1600年に関ヶ原の戦いを制した家康は、上洛した際に拠点となる城が必要だったため、この地に築城を課したといわれています。

1603年に家康が征夷大将軍になり、江戸幕府が始まります。その就任を祝う宴会が落成したばかりの二条城で行われました。このような宴会は2代秀忠、3代家光まで続きますが、4代家綱からは途絶えてしまいます。

1624年、3代家光は、後水尾天皇の行幸(天皇が外出すること)のために、二条城の改修を課します。約2年かけて、二の丸御殿に障壁画などが数多く加えられたほか、城を西へと拡張して現在の規模になりました。後水尾天皇の行幸は5日間行われ、二条城内で能や和歌などの会がにぎやかに行われたといわれています。きらびやかな城に天皇を迎えることで、徳川家による江戸幕府の支配を世に知らしめました。

その後、1634年に、3代家光が30万ともいわれる兵を率いて入城します。以来、幕末までの約229年もの間、将軍が京都へ来ることはありませんでした。

東南から北西にかけて、6棟が雁行形(がんこうけい)に建ち並ぶ、二の丸御殿。部屋数33、800畳もある内部は、障壁画で装飾されている

1862年。時代は移り幕末になると、黒船の来航をきっかけに江戸は大混乱に陥ります。そこで、公武合体(朝廷と幕府が協力して政治を行うこと)によって幕府の権力を取り戻そうとした14代家茂は、上洛するために荒れ果てていた二条城を再び改修します。このとき、二の丸御殿は全面的に修復されました。そして、翌年の1863年に、3000の軍勢を率いた家茂が二条城に入ります。

1866年に15代慶喜が将軍になると、犬猿の仲にあった薩摩藩と長州藩が盟約を結び武力で幕府を倒そうとします。しかし、福井藩や土佐藩はあくまでも戦争を避け、朝廷の下で諸大名が連合する政治を目指し、慶喜に政権を朝廷へ返上するよう提案します。追いつめられた慶喜は、二の丸御殿の大広間で「大政奉還」を発表し、1867年10月に江戸幕府の幕を降ろしました。

このように、初代家康、2代秀忠、3代家光の征夷大将軍就任を祝う宴会と、15代慶喜によって「大政奉還」が発表された二条城は、言わば、江戸幕府の始まりと終わりを見届けた城なのです。

見張り台として外堀の四隅に建てられた、隅櫓(すみやぐら)。現在は東南と西南の2つが残っている

近代の二条城

二条城は、幕末の混乱や戊辰戦争から戦火をまぬがれ、多くの建物が無事でした。明治時代になると宮内省の所管となり、「二条離宮」として皇室の別荘になります。1893年に、京都御所内にあった桂宮御殿が本丸に移築され、これが現在の本丸御殿となります。1915年には、大正天皇の即位を祝う宴会が二条城で行われました。
昭和になると、二条城は宮内省から京都市に下賜されます。そして、1940年に「元離宮二条城」として一般公開が始まりました。

最大の見どころは、国宝に指定されている二の丸御殿です。江戸時代の御殿が現存している例は少なく、江戸城、大阪城、名古屋城の御殿は焼失してしまったので、徳川将軍家の御殿として唯一残っている御殿ということになります。他にも、本丸御殿や櫓、門、二の丸御殿内の障壁画が重要文化財に、二の丸庭園は特別名勝に指定されました。

外周は約2km、東京ドーム約6個分もの広さを有し、現在では京都屈指の人気観光スポットとなっています。

イベントの主催者、田中嗣人さんにインタビュー

二条城の魅力をご紹介したところで、このような由緒ある建築物の外堀に潜って清掃するという、かつてないイベントを企画・運営した京都市のダイビングスクール<ブルーピーター>代表の田中嗣人さんにインタビューしました。

外堀の水中清掃を企画したきっかけ教えてください。

数年前から、「日本釣振興会」主催の水中清掃活動に参加していて、各地の川や河口、海での清掃を続ける中で、地元である京都の街にダイビングのスキルを生かしてなにか貢献できないかと考えたことがきっかけです。外堀周辺の清掃活動はニュースなどで耳にしますが、僕らダイバーは潜ることができるので、それを役立てられないかと考えました。また、「日本釣振興会」の全面協力により、この活動には無料で参加いただけることになったので、踏み切ってよかったと思っています。

大変だったことはありましたか?

元離宮二条城は世界遺産ということで、正式な許可をいただくまでに2年かかりました。京都市長をはじめ、「京都市元離宮二条城事務所」「鴨川を美しくする会」「賀茂川漁業協同組合」「日本釣振興会」京都支部の皆さまに多大なるご理解とご協力をいただき、無事に開催することができて本当に感謝しています。

今後の目標を教えてください。

今やダイビングを通じての環境保全活動は確立しつつあります。スキルがあるベテランダイバーの方にはこういったイベントに積極的に参加していただきたいですし、初心者の方には見てみたい生き物や体験してみたい地形などと同様に、水中清掃を目標としたトレーニングや経験を積んでほしいと思っています。知識とスキルのあるダイバーが増えれば、もっと社会に役立つことができると思うのです。

いざ!外堀へダイブ

6月14日のイベント当日。朝までしとしとと降り続いていた雨は奇跡的にやみ、いよいよ歴史的な日を迎えました。集まったのは、このイベントに賛同したダイバーや<ブルーピーター>の受講生ら、およそ40人。水中班と陸上班に分かれ、外堀の南側をおよそ200mにわたって清掃しました。その様子を一挙公開します!

午前10時。主催者の田中嗣人さんをはじめ、「鴨川を美しくする会」事務局長の杉江貞昭さん、「日本釣振興会」京都支部の大西進さんらによる開会の挨拶がありました。話を聞きつけたテレビ局や新聞社の取材がやって来るほど、歴史的な日の幕開けです。

 

チームごとに担当エリアが発表され、バディ同士で器材をセッティング。ゴミ拾いに必須となる軍手をしっかりと装着します。水中班の参加者は、スキルのあるベテランダイバーです。水面を確認して、高さ1mほどある石垣からエントリー!

 

隙間なくきれいに積み上げられた水中の石垣は、小さい魚やエビの住みかとなっていました。そっと触れてみると、柔らかさを感じるほどの堆積物で覆われています。視界はというと、水面で目を凝らしてやっと自分の手が見えるほど。水深50cmより深くなると沈殿物が舞い、一気に暗闇と化します。

 

水面に顔を出しマスクを外すと、かすかに硫黄のような匂いが漂っていました。石垣の上にはたくさんの木々が生い茂っていて、この匂いはその落ち葉や朽ち木を長い間この外堀の水がすべて受け止めている証拠だとわかりました。ここ京都に鎮座し、400年以上もの間日本を見守ってきた、二条城の歴史を感じます。

 

そんなことを思いふけっていると、発見されたゴミが次々と陸上班によって引き揚げられていました。決して楽とは言えない作業は、チームワークがあってこそ。

 

中には、自転車まで。いつ、誰がこんな大きなものを捨てたのでしょうか……。海洋プラスチック同様、世界遺産のゴミ問題も深刻化しているそう。

 

50分ほどの作業で見つかったゴミ。おそらく、風に飛ばされてきたと思われるビニール製品や、投げ捨てられたであろう小瓶、長靴、植木鉢に加え、携帯電話や車のナンバープレートまでが見つかりました。

 

各地から集まった人たちが、外堀の清掃という活動を通して1つになりました。そう遠くないうちに、また開催されることを願っています。

参加者の声

今回のイベントに参加しようと思ったきっかけや実際に外堀を潜ってみた感想、今後参加してみたい水中清掃活動についてお伺いしました。

ワールドダイブ株式会社 藤代治さん

京都の観光業は、新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けており、いつか観光客が戻ってきた際に、少しでもきれいな環境で迎えられるようにしたいと思ったので、今回のイベントに参加いたしました。海の水中清掃は現地サービスやプロショップの努力により各地で開催されていますが、SDGsの取り組みを進めていく上で、海だけでなく山や川、街の関係各所と協力して行う、今回のようなイベントがもっと増えたらいいなと思っています。

<ブルーピーター>受講生 伊藤絵理奈さん

一見きれいな外堀ですが、潜ってみると想像していたよりも視界が悪く、折れた樹木や枝、葉っぱなどが蓄積され、まったく底を感じられませんでした。でも、流れがないことや水深が浅いこと、幅に限りがあるということから、そこまで怖くはなかったです。以前、舞鶴湾や琵琶湖、鴨川での水中清掃活動に参加したことがありますが、それぞれの場所によってゴミの種類に特徴があると思いました。また機会があればどんな場所でも参加したいと思っています。

潜水屋Ti-Da代表 仁科貴彦さん

誰も潜ったことのない、歴史ある二条城の外堀に潜れるということで参加しました。清掃してみると、浮いているゴミなどはほとんどなく、水中も想像していたよりもきれいだったので、普段からしっかりと管理されていることが伺えました。今度は、後世にきれいな水を残すため、琵琶湖での水中清掃活動をしてみたいです。

「賀茂川漁業協同組合」代表理事 澤健次さん

私はみなさんの安全管理をするため、スノーケルで水面にいました。水底は自然の蓄積物が腐敗して泥のようになってしまっていたので、視界が悪く手探りで拾えるゴミの量は少なかったですが、それでも今回の活動はとても有意義だったと思います。大きなコイがたくさん泳いでいたので、少しでも住みやすい環境になってくれたらうれしいです。

旅行会社を介して参加 横山敏彦さん

株式会社エス・ティー・ワールド大阪支店の井川真由美さんからのお誘いで、このようなイベントがあることを知り、参加しました。水中はかなり濁っていましたが、日頃の管理が行き届いており、ゴミは少なかったよう思います。歴史的な瓦などが発見されるかと思いましたが、残念ながら見つかりませんでした。また是非このような清掃活動に参加したいと思っています。

Stream Trail 新谷幸英さん

地元である京都をいつまでもきれいに、これからの若者や子供達に残していければと思い参加しました。思ったよりもゴミの量は少なかったですが、自転車が引き揚げられた時は驚きました。今後も、こういった活動にはできるだけ参加したいと思っています。

 

協力=京都市元離宮二条城事務所ブルーピーター

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DIVER ONLINE 編集部

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